北陸新幹線「延伸問題」 米原から先は、滋賀県「通勤新線構想」で解決できるのでは?
建設費膨張、反対意見続出
実現すれば理想的な未来が待っているように見える試算結果を示したが、筆者を含め、多くの反対意見が出てくることが予想される。 主な懸念点は、建設費と開業後の料金負担の増加だ。まず、建設費については、敦賀~米原間の1兆円で済む予定が、延長することでその3倍程度に膨らむ見込みだ。新大阪まで延伸するため、これは避けられない事実だ。 また、距離も小浜京都ルートの140kmより1割長くなる。しかし、京都市内を通過せず、トンネル部分も大幅に削減できるため、建設キロ単価は低く抑えられるだろう。そのため、距離が長くなっても小浜京都ルートよりは安くなると考えられる。それでも、米原ルートの費用に2兆円程度の上乗せが必要で、合計で3兆円近い負担を受け入れなければならない。 これが筆者が反対する理由のひとつだが、さらに反論として 「並行する新名神高速道路の建設時に行った地質調査や土砂搬出道路を活用すれば、コストや環境負荷の低減が可能」 という意見が出てくるだろう。前回の記事で四方府議から聞いた「既存の高速道路建設時に使った工事道路を活用する」という考え方だ。 びわこ京阪奈ルートは京都市内を通らないため、京都から北陸への移動は米原駅での乗り換えが固定化され、京都~米原間の輸送は東海道新幹線に依存することになる。 しかし、宇治市など京都の南側にある観光地へ行く場合、米原で東海道新幹線に乗り換えるよりも、北陸新幹線を乗り通して山城青谷で奈良線に乗り継ぐ方が便利な人も多いだろう。ただし、京都発着の北陸行きの全ての旅客を現在の「ひかり」や「こだま」に頼るのは無理があるのではないだろうか。
延長ルートで運賃負担増加
米原での乗り換えが固定化されることで、料金面でも不利になる。以前の米原ルートの料金試算記事では、JR西日本が東海道新幹線に第2種鉄道事業として乗り入れる前提だったため、小浜ルートよりも安い料金としていた。しかし、今回は乗り入れをしない前提の案となるため、料金は米原で打ち切られ、京都~米原間には別途、JR東海の特急料金990円(自由席料金)が必要となる。 そのため、例えば京都~金沢間の特急料金は、通算で指定席3930円だったものが、最低でも京都~米原間自由席990円と米原~金沢間指定席3060円を合わせた4050円となり、120円の料金増加が生じる。120円の増加は旅客にとっては大きな負担ではないかもしれないが、JR西日本にとっては、京都~金沢間で3930円を取るはずが、米原~金沢間で3060円しか取れないとなれば、気分が良くないだろう。 また、路線延長が小浜ルートより14km長くなることにより、新大阪からの利用でも運賃が330円または440円高くなるケースが出てくる。米原ルートの東海道新幹線乗り入れ案のように、湖西線経由で計算する経路特定制度による営業キロ短縮は使えない。特に、新大阪~加賀温泉間では運賃が440円ほど小浜ルートより高くなる。 また、料金は100km単位で上がるため、小浜ルートではギリギリ1段階料金が上がらずに済む距離の駅では、びわこ京阪奈ルートだと800円前後高くなる。例えば、新大阪~福井間では、小浜ルートなら特急料金3170円で済むところ、びわこ京阪奈ルートでは料金が1段階上がり4060円となり、さらに運賃が330円上がるため、小浜ルートでは合計6580円で済むのが、びわこ京阪奈ルートでは合計7800円となり、1220円の差が生じる。JR西日本にとっては、この差は有利ではあるが。 これらの試算結果を踏まえた上で、筆者としては「びわこ京阪奈ルート」はあまりおすすめできないというのが考えだ。