北陸新幹線「延伸問題」 米原から先は、滋賀県「通勤新線構想」で解決できるのでは?
松井山手開業で最短1時間52分
この列車体系を前提に、まずは松井山手までの暫定開業時のダイヤを想定する。新大阪駅の工期が長いため、完成までの間、学研都市線とおおさか東線を経由して特急「サンダーバード」を運行する必要が出てくるだろう。また、学研都市線からJR東西線を経由して京橋、北新地、尼崎までの特急設定も考えられる。 例えば、「らくラクかわち」という名称で運行されるかもしれない。学研都市線のダイヤに合わせる場合、この「サンダーバード」と「らくラクかわち」を30分おきで交互に走らせることになるだろう。JR西日本なら、JR東西線方面とおおさか東線方面に分かれる放出駅で「サンダーバード」とJR東西線直通列車、「らくラクかわち」とおおさか東線列車が接続し、どちらの特急を利用しても新大阪や京橋へのスムーズなアクセスが可能になるだろう。 このような条件で試算すると、松井山手暫定開業時でも、新大阪~金沢間は最速1時間52分(松井山手乗り換え時間14分)、京橋~金沢間は最速1時間48分(同10分)になる見込みだ。 また、東海道新幹線乗継では、新大阪~金沢間が最速1時間24分、京都~金沢間は1時間9分となる。 びわこ京阪奈線の代替機能としては、松井山手での乗り換えは残るものの、例えば貴生川から新大阪までは1時間7分(9分短縮)、京橋までは59分(35分短縮)となる。信楽から新大阪までは1時間(44分短縮)、京橋までは52分(1時間10分短縮)となる。また、信楽高原鉄道が比較対象として挙げている米原~京田辺間2時間38分に対しては、米原~松井山手間の所要時間は新幹線1本で27分となり、2時間以上の大幅な短縮が実現する。 奈良線沿線からも、乗り換えは2回になるが、城陽から京橋までは47分(学研都市線内は快速利用・乗り換え時間込み)となり、黄檗駅で京阪線に乗り換えるルートに比べて21分の短縮となる。
新大阪~金沢間1時間14分の実現
松井山手が先行開業し、数年後に新大阪駅まで全線が開通した場合、ようやく本格的な時間短縮効果が現れることになる。新大阪~敦賀間の建設距離は、小浜ルートが約140km(当初)であるのに対し、米原・びわこ京阪奈ルートは154kmと1割ほど長くなっているが、その分遠回りとなるにも関わらず、最速の列車の所要時間は意外にも小浜ルートより短くなる。 まず、新大阪~金沢間では、小浜ルートより6分短い1時間14分を記録する。距離が長いにもかかわらず速いのは、京都駅を通らないため、途中の停車駅が減り、結果的に所要時間が短縮されたためだ。新大阪~福井間はノンストップで52分となる。このほか、新大阪から富山までは1時間35分、長野までは2時間21分、東京までは3時間45分程度で到達する見込みだ。東海道新幹線「こだま」の所要時間(3時間54分)より10分ほど早く、東海道新幹線が運休した際の代替手段として十分な速さを誇るだろう。 次に、びわこ京阪奈線の区間では、松井山手での乗り換えが解消されることで、さらに所要時間が短縮される。例えば、貴生川から新大阪までは37分(39分短縮)、信楽から新大阪までは30分(1時間14分短縮)、米原から松井山手までは27分(2時間11分短縮)となり、非常に大きな時間短縮が実現する。この効果は、滋賀県を交渉のテーブルに引き込むための強力な要素となりそうだ。何より、新幹線という形であっても、米原ルートとの連携による「びわこ京阪奈線」の誘致は、この路線の実現にとって絶好のチャンスといえるだろう。 奈良線沿線から山城青谷駅で乗り換えて利用する場合でも、時短効果は大きい。城陽から新大阪までは26分(京都から新快速利用より28分短縮)となり、現行の半分以下の時間で到達できるようになる。