地球はいつ冷めた?生物はじまりのカギ、鉱物ジルコンで迫る42億年前の地球
冥王代後期の地球環境の最新研究
サッカーのワールドカップ・ロシア大会がはじまる少し前。シカゴ大学のPatrick Boehnke博士が率いる研究チームは、冥王代の地球空冷化と「地殻またはプレート」(=岩石によって形成される地球の外表面)の起源に関する興味深い研究を発表した(Boehnke等2018」の記事で以前に取り上げた。() データのカギとなる岩石のサンプルはカナダ北東部のケベック州にある「Nuvvuagittuq Greenstone Belt」と呼ばれる岩石帯からのものだ。この冥王代後期から始生代(Archean)前期の火成岩(または堆積岩)が変成して形成された「Greenstone(グリーンストーン)」と呼ばれる岩石群は、地球上で見つかる最古の石の一つとして知られている。 注:こちらのScienceDailyのサイトにケベック州のGreenstone現場の写真がアップされている:。 このカナダ産Nuvvuagittuq Greenstoneの岩石には、幸運なことに先に紹介したジルコンという鉱物の結晶が含まれている。そのため詳細な地質年代のデータが手に入る。 そして研究チームは岩石に含まれている「シリカ(二酸化ケイ素:SiO2)」の成分分析も行った。このシリカは例えば石英の主要成分にもあたり、地殻(プレート)の最も主要な鉱物のグループだ。つまり冥王代の地球における地殻の存在を判断する手掛かりとなり得るわけだ。 一連のデータをもとに研究チームは地球の表面にあたる陸地と海底を形成する地殻が、「42億年前」 ── そしてもしかすると44億年近く前 ── に、すなわち生物を受け入れられる環境が少なくとも存在していた可能性があると主張している。 今回の研究は、冥王代の長い時代を通して「非常に高温でドロドロにとけた溶岩に覆われた地球」というこれまで常識と信じられてきたイメージを、覆す可能性があるように私には映る。将来出版される地質学の教科書を書き換える必要さえ出てくるかもしれない。 「冥王代前期又は中期に起こった地球の空冷化」という仮説をもとに、研究チームはさらに大胆な問いかけを論文のなかで投げかけている。 初期冥王代の海または大地がすでに「生物を宿していた」可能性はなかっただろうか? 今のところ化石記録において知られている最古の生物は、約37億年前の始生代の前期のものだ(「37億年前-世界最古記録の生物化石記録」の記事参照)。しかし、文字通り生物のはじまりを意味する「始生代」よりはるか以前の冥王代という時代において、すでに生物が出現していたとしたら? 生物の起源を探る上でこれほどエキサイティングなストーリーは他になかなかないのではないだろうか? 果たして冥王代の生物はどのような姿をしていたのだろうか? そしてその化石はどこで見つけられるのだろうか? グリーンランドか、オーストラリアか、それとも月の岩石の中か? 今後の更なる研究を大いに期待したい。