2025年、注目の展覧会10選。
彼の活動は「ウルティマ・ツーレ(「世界の果て」の意)」をはじめとするガラスの名品や陶磁器、カトラリー、家具などのプロダクト、合板による木のオブジェ、ランドスケープアートまで多岐にわたる。その背後にあるのは彼が愛したラップランドの静寂と、自然に宿る生命力と躍動だ。 この展覧会はヴィルカラとブリュックの作品を常設展示している〈エスポー近代美術館〉の協力で開かれるもの。ヴィルカラのプロダクト、ガラスや木の彫刻、写真など約300点が並ぶ。プロダクトデザイナーであり、彫刻家、造形作家として活躍したヴィルカラの多彩な顔を紹介する。
●東京『藤本壮介展』(2025年7月2日~11月9日)
渦巻き状に配された書架がある〈武蔵野美術大学美術館・図書館〉、3つの箱が入れ子になった住宅〈House N〉、古い旅館をアート・ホテルに生まれ変わらせた〈白井屋ホテル〉などで評価されている建築家、藤本壮介。彼にとって東京の美術館でこれだけの大規模な個展を開くのは初めてのことだ。 藤本壮介は1971年北海道生まれ。現在、東京とパリ、深圳に事務所を構え、世界各地でプロジェクトを進行させている。近年ではその名の通り白い葉が枝を広げているような集合住宅《ラルブル・ブラン(白い樹)》(2019年、フランス・モンペリエ)、内部にも森が続いているかのような空間が広がる音楽複合施設《ハンガリー音楽の家》(2021年、ブダペスト)などを完成させた。2025年に開催される「大阪・関西万博」の会場デザインプロデューサーとして巨大なリング状の構造物を設計するなど、世界的に注目されている。
会場ではたくさんの模型に囲まれる空間、「大阪・関西万博」のリングの5分の1模型、今年のコンペで藤本が選出された仙台の〈国際センター駅北地区複合施設〉の大型模型や資料などが展示される。彼の建築を視覚だけでなく身体でも体感できる展覧会だ。
●香川『大竹伸朗展』(2025年8月1日~11月24日)
質、量ともに見るものを圧倒する仕事量で半世紀近い創作活動を続けてきた大竹伸朗。1988年に宇和島市に拠点を移した彼の大規模個展が〈丸亀市猪熊弦一郎現代美術館〉で開かれる。同館では12年ぶりになる個展だ。 今回の個展では「網膜」にフォーカスをあてる。「網膜」は廃棄された露光テスト用のポラロイド・フィルムに残された光の痕跡をカンヴァスに拡大転写し、その表層にウレタン樹脂を塗布したもの。分離した「透明のマチエール」と「写真像の色彩」が脳内で統合され、新たな像として見るものの前に立ち現れる。