2025年、注目の展覧会10選。
展覧会ではこれらの住宅における衛生へのまなざしや、鉄やコンクリートといった当時の新素材、内と外をつなぐ豊かな演出、キッチンの進化、自然とのつながりといった側面にスポットをあてる。中でもミース・ファン・デル・ローエの未完のプロジェクト〈ロー・ハウス〉を原寸大で実現する展示は必見だ。2025年1月31日まではこの〈ロー・ハウス〉模型制作のためのクラウドファンディングが実施されている。現代の住まいに通じるさまざまな流れを体感できる。
●京都『アンゼルム・キーファー大規模展覧会(仮称)』(2025年3月下旬~6月下旬)
日本では2024年に公開されたヴィム・ヴェンダース監督の映画『アンゼルム "傷ついた世界"の芸術家』でも大きな話題を呼んだアンゼルム・キーファー。2025年にはいよいよ彼の作品が日本にやってくる。場所は世界遺産、京都にある〈二条城〉だ。二の丸御殿台所・御清所や城内庭園などそれぞれにユニークな空間にキーファーの作品が現れる。
キーファーは1945年ドイツ生まれ。これまで〈ポンピドゥー・センター〉や〈広島市現代美術館〉など、世界の名だたる美術館で個展を開催してきた。土・石・藁・鉛といった素材や神話を参照した重厚な作品が、人間の歴史や精神の深くて暗いところに私たちを導く。
二条城ではこの場所のために制作した新作が展示される。彼は狩野派の屏風に使われている金箔や、谷崎潤一郎が『陰翳礼讃』で綴った日本建築における光と闇の佇まいに魅了されたという。金は自ら光を放つのではなく、他からの光を反射することで輝く。また化学変化しにくい金は権力者を始めとして多くの人を虜にしてきた。キーファーの作品には創造と破壊、再生といったものが色濃く感じられる。桜咲く〈二条城〉で彼の作品が何を語るのかを見届けたい。
●東京『タピオ・ヴィルカラ 世界の果て』(2025年4月5日~6月15日)
フィンランドのモダンデザイン界の重鎮、タピオ・ヴィルカラ(1915―1985) を紹介する日本では初めての大規模な個展。ヴィルカラは1940年代後半から1950年代にかけてイッタラ社のデザインコンペに優勝、ミラノトリエンナーレにも3度、入賞して脚光を浴びた。セラミックアーティストの妻、ルート・ブリュックとともにフィンランドでは多くのミュージアムに作品が収蔵されている国民的デザイナーだ。