2025年、注目の展覧会10選。
ゾフィーについては2021年、ニューヨーク近代美術館などで回顧展が開催されたのを機に再評価が進んだ。彼らが活躍した20世紀前半は、女性にはテキスタイルなど応用美術がふさわしいと考えられており、ゾフィーは前衛芸術の分野で活躍した女性の先駆的存在となる。ジャンに比べると日本では紹介される機会の少なかったゾフィーの創作活動を包括的に紹介する貴重な展覧会となる。
●東京『ヒルマ・アフ・クリント展』(2025年3月4日~6月15日)
20世紀初頭、カンディンスキーやモンドリアンに先駆けて抽象絵画を創案した画家として、近年再評価が進むヒルマ・アフ・クリント。1862年、スウェーデンに生まれた彼女は肖像画などで多くの注文を受ける職業画家として活動する一方で、神秘主義思想やスピリチュアリズムに傾倒し、アカデミックな絵画とはまったく異なる抽象表現を生み出す。1906年から1915年にかけて彼女は自身が構想した全193点の「神殿のための絵画」を描きあげる。そのうち、1907年には人生の4つの段階についての絵画を描くよう天啓を受け、《10の最大物》と呼ばれる10点の絵画を描いた。アフ・クリントは81歳に死去するまで制作を続けたが、それらが他者の目に触れる機会は少なかった。 没後は限られた人々だけに知られていた彼女の作品は1980年代以降、少しずつ注目を集めるようになる。2018年にニューヨークのグッゲンハイム美術館で開かれた回顧展は同館史上最高の100万人以上を動員した。 この展覧会はアフ・クリントのアジアでは初めての大回顧展になる。約140点の作品や彼女が残したノートなどの資料はすべて日本初公開だ。美術史を書き換えるかもしれない画家の存在を目に焼きつけたい。
●東京『リビング・モダニティ 住まいの実験 1920s-1970s』(2025年3月19日~6月30日)
ル・コルビュジエやミース・ファン・デル・ローエといった建築家たちが探求した、機能的で快適な戸建ての住まいを巡る展覧会。1920年代から70年代にかけて建てられた14のモダン・ハウスを軸に、彼らが目指したものは何かを探る。 登場する住宅はル・コルビュジエが両親のために建てた〈ヴィラ・ル・ラック〉、藤井厚二の5番目の自邸〈聴竹居〉、リナ・ボ・バルディの自邸〈ガラスの家〉、ジャン・プルーヴェが自身の経営する工場の部材を使って組み立てた〈ナンシーの家〉など。菊竹清訓・菊竹紀枝がメタボリズムを実践した〈スカイハウス〉や、ありふれた建売住宅を独自に拡張したフランク・ゲーリーの〈フランク&ベルタ・ゲーリー邸〉なども興味深い。