<元日本代表 水沼貴史が語る>メンバー固定の弊害が出ているザックJ
ザックと選手の意図が大きくずれている
ハーフナーの高さを生かそうとしない点だけではない。FW柿谷曜一朗(セレッソ大阪)の相手の裏に抜ける能力が生かされない点も、ザッケローニ監督と選手たちの意図が大きくずれていることを物語っているように思えてならない。 ベラルーシ戦後には、セレッソのチームメイトであるMF山口螢がこんなコメントを残している。 「ボランチの選手がボールを持ったときに、曜一朗君は背後を取るような動き出しを何度もしている」 一方でMF遠藤保仁(ガンバ大阪)は「裏を取れない」と言っている。原因は何なのか。ただ単に前を見ていないのか。見ているけどタイミングが合わなくて縦パスを出せなかったのか。あるいは、タテ一発で素速く崩すサッカーを志向していないのか。
「俺たちはレギュラーだ」と勘違いしているのでは
遠藤クラスの選手ならば、柿谷の動き出しに合わせて長い縦パスを入れられる。となると、3番目の理由が働いていると思わざるを得ないだろう。 パスを回して相手を崩す。時間をかけて試合を支配する。そういうサッカーを志向するがゆえに、柿谷が最も生き、いまの日本代表に必要な攻撃パターンでもあるカウンターをよしとしないのではないか。 主力選手の大半はヨーロッパのクラブでプレーし、国内組の遠藤とDF今野泰幸(ガンバ大阪)も経験値が高い。そうしたある種の優越性が、勘違いに変わってきているように思えてならない。 オレたちは試合に出られる、オレたちはレギュラーだから、と。そもそも、日本代表の中にすでに座席があると信じて疑わないからこそ、「新しいこと」という考えが出てくるのではないだろうか。 その「新しいこと」にしても、おそらくはチーム全体で取り組んでいることではないだろう。試合に出られる一部選手だけが机上で考えてトライしているように映る点で、今後へ向けての不安は尽きない。
長くメンバーを固定した弊害
来年のW杯出場を決めた6月のオーストラリア代表戦あたりから感じてきたことだが、長くメンバーを固定して戦ってきた弊害がここにきて顕著になっていると言っても決して過言ではないだろう。 チームを成熟させるためには不動のメンバーで戦うことも必要だけれども、ザッケローニ監督の場合は、明らかに一線を超えてしまった感が否めない。今回のヨーロッパ遠征でも、2試合を通じて先発メンバーが同じだったことにも心底驚かされた。 チームマネジメントはザッケローニ監督の仕事となるが、もはや彼だけでは上手くいかない状況にあると言えるのではないか。ならば橋渡し役を誰が務めるのか。おそらく新しいコーチを入れることはないだろうし、現状の日本人スタッフにも残念ながら適役は見当たらない。 となれば、打開策はただひとつ。ザッケローニ監督と本田をはじめとする選手たちのどちらかが妥協することだ。両者の話し合いの中で、落としどころを見つけることだ。