日本にも関係の深いインド文化の大逆転か イギリス初の非白人首相が誕生
イギリスの首相にリシ・スナク氏が就任しました。両親がアフリカから移住してきたインド系で、イギリスでは初の非白人の首相となります。 建築家で、文化論に関する多数の著書で知られる名古屋工業大学名誉教授・若山滋氏は、かつての植民地にルーツを持つ人物の首相就任に「隔世の感がある。歴史は動いている」と言います。そして、インドについて、「日本人の魂に大きな影響を与えた国であり文化」と指摘します。若山氏が独自の視点で語ります。
大英帝国とインド
シャーロック・ホームズやエルキュール・ポアロなどが活躍するテレビドラマからは、当時(大英帝国の最盛期とその栄光が翳りはじめる時期)のイギリス人の生活の様子が感じられて面白い。興味深いのは、そこに現れる植民地との関係であり、中でもインドは重要な地位を占めていた。残念ながら、当時(特にホームズの時代)のイギリス人の、インド人に対する感覚には偏見があった。 そのイギリスで、インド系のスナク首相が誕生した。かつての植民地にルーツをもつ人間が大英帝国の総帥の地位に就いたのである。 知的エリートで資産家だというが、僕らの世代にとってはやはり隔世の感がある。アメリカ合衆国にオバマ大統領が誕生したのと同様だ。歴史は動いている。 今の若い人にインドという国はどう映っているのだろうか。中国を包囲するかたちで築かれたクアッド(日・米・豪・印)のひとつであり、ムンバイ(ボンベイ)を中心とする金融産業、ベンガルール(バンガロール)を中心とするIT産業などによって経済発展を続ける人口大国という印象だろうか。しかし僕らの世代には、第2次世界大戦後、マハトマ・ガンジーの無抵抗主義によって独立を果たした国で、その後もカーストという身分制度に縛られてなかなか近代化しない、大きな貧困を抱える国という印象が強い。 ここで、日本にとってのインドという国と文化の位置づけを歴史的に点検してみたい。 中国やアメリカと比べれば、縁遠く感じるかもしれないが、日本人の魂に大きな影響を与えた国であり文化なのだ。