日本にも関係の深いインド文化の大逆転か イギリス初の非白人首相が誕生
数学と英語とITによる文化の大逆転
しかし、古代から数学の文化をもち、英語に強い(この点ではイギリスの植民地であったことが幸いした)ことから、近年、IT産業、金融産業が発達し、欧米でもインド系の人材がその先端を支えている。つまりインド文化がグローバリズムに乗ったのだ。その結果として、中産階級が拡大し、近代的な経済発展の途について中国を追うかたちだ。 とはいえ、文化的には中国とインドのあいだには決定的な違いがある。過去にも書いたことがあるが、「ユーラシアの帯」において、インドはアルファベットと石造宗教建築を基本とする「大きい文化圏」に属し、中国は漢字と木造宗教建築を基本とする「小さい文化圏」の主体であった。またインドは言語的にも「印欧語族」として欧米との共通項をもつ。日本とはまた違う意味で「西側」に近いのだ。 そういったことから、中国とインドの「西側」に対するスタンスには、大きな違いが生じている。近年は、経済発展の副作用であろうか、ヒンドゥー・ナショナリズムが台頭しているが、その点でもイスラムと中国に対抗するかたちとなり、結果として西側と協調するようだ。いずれにしろ、この国とその文化が今後の世界状況に大きな影響を及ぼすことはまちがいない。 確認しよう。 歴史的に、日本の文化と社会制度に直接的な影響を与えたのは、古くは中国であり新しくは欧米であるが、その魂の深いところではインドであった。 また現在、世界のIT産業、金融産業をリードしていることは、インド文化が近代文明の底辺から頂点へと転換しつつあることを示しているように思える。 その意味で、ちょうどエリザベス女王が亡くなったあとに、スナク首相が登場したことは、かつて世界の海を支配した大英帝国の歴史においても、英米がリードする現代世界の文化地図においても、一種の逆転劇であるといえようか。 ゲームにも、人生にも、文化にも、大逆転というものがある。