突きつけられた問題点…日本は本当に“強豪”スペインと互角に渡り合ったのか…城氏が五輪準決勝の戦いを分析
森保監督の後半の交代カードの切り方は的を射ていた。 後半19分に旗手→相馬、林→上田と2枚代えをした。相馬の縦のスピードで勝負したいという意図は理解できた。実際、相馬は左サイドでチャンスを作ったが、上田はボールに触る機会も少なく前線で孤立してしまっていた。まだコンディションも万全ではなかったのだろう。ただ延長戦に入ってからの交代には疑問があった。久保と堂安の2人をベンチに下げ、前田と三好を入れた。スペインに対してハードワークができるフレッシュな選手を投入したのだろうが、堂安はかなり疲れていたが、久保はまだ動けていた。 久保のキープ力と突破力をスペインは嫌がっていた。久保を延長戦前半までは引っ張っても良かったのではないか。前田はスピードを生かしクロスにヘッドを合わせる決定的な得点機も作ったがゴールバーの上へ外した。相手は久保がいなくなったことで楽になったのかもしれない。 金星まであと一歩の試合を演出した一人はGKの谷だろう。前に出る判断の良さが際立っていた。1対1の決定的なピンチからのシュートを何本も止めた。FWからみると、打つ瞬間に、あそこまで寄られるとシュートコースがなくなる。相手ストライカーとの間合いの取り方が谷ペースだったのだ。あと2、3歩、前に出てくるタイミングが遅ければ、ゴールはガラ空きに見えるものだが、谷は的確な判断で動いた。つまりFWの最後の動きまでをよく見ていたということ。今大会で成長したプレーヤーの1人である。 大金星と決勝進出は逃したが6日にメキシコとの銅メダルマッチがある。 偶然にも53年前と同じカード。前回はメキシコホームの五輪でアウエーの日本が勝った。今回は立場が逆で、そこに運命的な巡り合わせを感じざるを得ないが、目標に掲げていた金メダルへの道を断たれて中2日で気持ちを切り替えることは簡単ではない。ショックに加えて挫折感が大きいだろう。 準決勝でブラジルに負けたメキシコも同じ条件。だが、グループリーグで日本に1-2で負けているメキシコには、同じ相手に2度、負けるわけにはいかないというモチベーションがある。7月25日のメキシコ戦では、日本が早い時間帯に先制点を奪い、相手が体勢を整えきれない間に追加点をあげて主導権を握った。戦術的にはメキシコの弱点である両サイドをうまく突いていた。当然、メキシコも対策を練ってくるだろうし、元々、個の能力も高く強いチームである。きっと厳しい試合になるだろう。 主将の吉田が言った「メダルを獲って終わる」という思いを全員が強く持ち、気持ちの切り替えができるかどうか。中2日で消耗した体力をどうリカバリーするか。そこが勝負の分かれ目になるだろう。日本は「このチームでメダルを獲れなければおかしい」というくらいの五輪史上最強のメンバーを揃えた。サッカー界の未来へ向けて是が非でも53年ぶりの銅メダルを奪い取ってもらいたい。 (文責・城彰二/元日本代表FW)