佐賀のものづくり産業が“二酸化炭素ゼロ”でブランド化<シリーズSDGsの実践者たち>【調査情報デジタル】
海苔の養殖は、海苔の胞子がついた牡蠣の殻を袋に入れて、海に設置した網に吊るす方法で行われる。 海水温が23度以下になると、海苔の胞子が飛び立って網に付着していく。しかし、昨年までの2年間は、海水温の上昇や栄養塩不足により、過去になかったような大不作となった。三福海苔の後継者として、2年後に事業承継を予定している川原専務は、この大不作によって危機感を強く抱いた。 「私は今34歳なので、少なくともあと30年は海苔の業界にいると思います。でも、さらに海水温が上がるとすると、30年後を考えたらぞっとするんですよね。海苔の産地にいるからこそ、この業界が廃れていくのは見たくないですし、守っていく責任があります。海の環境を守るために自分たちの若い世代が何とかしなければいけないと思っています。“二酸化炭素ゼロ”に取り組むことによって、少しでも引っ張っていける存在になっていきたいですね」(川原専務) 三福海苔では業務の効率化、海苔を保管する大型冷凍庫の最新型への更新、店舗や工場内にある照明のLED化などによって、二酸化炭素の排出量を2021年度の88.13トンから、2023年度の78.64トンまで約10%削減した。 カーボンクレジットを購入して“二酸化炭素ゼロ”を実現しているものの、川原専務は「二酸化炭素の排出量そのものを減らしていきたい」として、現在は生産管理のデジタル化による業務の効率化を進め、今後は再生可能エネルギーの導入も検討している。 ■「SAGA COLLECTIVE」が目指す循環と継承 協同組合化した「SAGA COLLECTIVE」で事務局長を務めているのが、中小企業診断士などの資格を持つ山口真知さん。山口さんは2017年当時にジェトロ(日本貿易振興機構)の佐賀事務所に務めていて、会員企業の海外展開を支援した。その後、海外勤務を経てジェトロを退職後、再び佐賀に戻ってきて「SAGA COLLECTIVE」をサポートしている。