佐賀のものづくり産業が“二酸化炭素ゼロ”でブランド化<シリーズSDGsの実践者たち>【調査情報デジタル】
ところが、2020年から新型コロナウイルスの感染が拡大し、海外での展示会が開けなくなった。そこで、SDGsなどについての勉強会を重ねながら、広告代理店など3社に新たなブランディングの提案を求めたところ、慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科が提案したカーボンニュートラルによるブランディングを行うことで、会員企業の意見が一致した。 「会員企業には400年以上の歴史を持つ有田焼や、醤油や味噌、そうめん、酒造会社など100年以上続いている企業も多く、経営者の皆さんの自然環境に対する意識は高くなっています。地場産業をこれからも守っていくためにも、二酸化炭素削減は必要だと考えました」 ■2年連続で大不作となった有明海の海苔 11社の中には、地球温暖化の影響を深刻に感じている企業もある。佐賀市川副町に工場を構える三福海苔は、地元で養殖された質の高い海苔を使って、佐賀海苔の販売を行っている。 有明海は国内の海苔生産量の約6割を占める産地で、中でも筑後川が流れ込む川副町の広大な干潟では、2021年には全国の13%を超える生産量を誇っていた。最大で6メートルにもなる日本一の干満差によって十分な光合成ができることと、山からの養分を含んだ河川と海水が混ざり合うことで、高品質で旨みが強い海苔が取れている。 佐賀県自体も、2021年まで19年連続で海苔の生産量が日本一だった。ところが、約18億枚を誇っていた生産量は、2022年に9億枚に半減。翌2023年も同規模の生産量となり、2年連続の大不作となった。この2年間の生産量は兵庫県に抜かれている。 大不作の原因として考えられるのは、海水温の上昇と、海の栄養塩不足だった。三福海苔の川原崚専務は、海の変化を次のように説明する。 「海苔の養殖は、海水温が23度以下にならないと始めることができません。ここ数年は海水温が下がる時期が遅く、種付けの時期が遅くなりました。さらに今年は、海水温が思ったように下がらず、種付けがうまくいきませんでした」