片脚でも縦横無尽にピッチを疾走 東大出身のアンプティサッカー日本代表、 パラトライアスロンとの「二刀流」目指す
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脚や腕に切断などの障害のある人が、義足や義手を外して戦う7人制の競技「アンプティサッカー」。1年前に行われたある国内大会で、イタリアの強豪ACミランのユニホームを身にまとってピッチを縦横無尽に駆ける、ある選手に目を奪われた。 【動画】切断障害者のサッカー「アンプティ」 コロナ乗り越え全国大会 北澤豪氏「レベル上がった」 アンプティサッカーチーム「AC Milan BBee千葉」所属の金子慶也選手。アンプティは片脚の選手が医療用のつえを支えにプレーするため腕や脚への負担が大きく、体力的に過酷な競技だが、攻撃的な選手としてダッシュを繰り返すことができる彼のスタミナは国内選手の中でも群を抜く。相手と接触しても簡単に当たり負けない強さや、走る速さも含め、その強靭なフィジカルは、昨年トルコで開かれたアンプティサッカーW杯を戦った日本代表選手としても大きな武器になった。
ピッチ内での愛称は「ネコ」だが、果敢に前からボールを追って相手にプレッシャーをかけたり、ピンチではゴール前に戻ったり、味方からパスが出ることを信じてスペースに走ったりする姿は、むしろ「忠犬」に近い。その泥臭さに、東京大学を卒業後、大学院を経てIT企業で研究開発職として働く姿とのギャップを感じずにはいられない。 中学校までは義足を着けて通常の11人制サッカーをプレーしており、キックやドリブルといった技術を兼ね備えた金子選手は、大学在学中にはボクシングやパラ陸上も経験した。今はアンプティサッカーに加えて、パラトライアスロン選手としても世界トップを目指す26歳のチャレンジ精神の源は何なのか。
膝の不安がなくプレーできる喜び
生まれつき右脚の膝から下がなかった金子選手は、父親や兄がサッカーをしていた影響を受け、小学校入学から地元のサッカークラブに入った。本来の利き足は義足を付ける側の右脚だったが、成長で脚の力が強くなると、キックの際に義足が飛んでしまうようになり、低学年のうちに左利きに矯正した。主に左サイドハーフでプレーし、中学でもサッカー部に所属したが、右膝の亜脱臼に苦しむようになり、レギュラーをつかむことはできなかった。