切断障害者のサッカー「アンプティ」 コロナ乗り越え全国大会 北澤豪氏「レベル上がった」
THE PAGE
待ち望んだ2年半ぶりのライバル同士の戦いは、予想もしなかった大差に終わった。 脚や腕に切断などの障害のある人が、義足や義手を外して戦う7人制のサッカー、「アンプティサッカー」。つえを使ってプレーしているとは思えないほどのボールのスピード感や、接触プレーの激しさが特徴だ。だが2020年以降、新型コロナウイルスの影響で主要国内大会の中止が続いていた。今年の5月末、大阪市であった大会「第7回レオピン杯」では2年半ぶりにほぼ全国からチームが集まり、国内の3強によるタイトル争いが復活した。
アンプティサッカーも11人制サッカーと同様、実力伯仲のチーム同士はロースコアの接戦を繰り広げることが多く、PK戦で決着することも。コロナ前の国内大会の決勝は、1点を争う緊張感に包まれ、終わった瞬間に喜びを爆発させる勝者と、悔し涙を流す敗者のコントラストが際立つような試合もあった。 しかしながら、5月に国内3強同士が戦ったFCアウボラーダ(東京都)と関西セッチエストレーラス(大阪府)による、この大会の決勝スコアは8-0。地元の関西の選手たちが、敗れた瞬間に悔しさを通り越して笑みを浮かべるような大差だった。この2年半、コロナによって何が起こっていたのか。
2年半、1度もチーム練習ができなかった
コロナ禍で最も大きな影響を受けたといえるチームの一つが、「FC九州バイラオール」(大分県)だ。アンプティサッカーは日本各地に11チームが登録されている(日本アンプティサッカー協会)が、国内大会で優勝経験があるのは東京のアウボラーダと九州のバイラオールのみ。「西の横綱」と評される九州だが、今大会は準決勝でアウボラーダに0-7と大敗した。 最大の敗因は、アンプティサッカーW杯に日本代表として出場経験のある主力2人の欠場。ただ、試合中の統率を欠いていたように思えた点も気になった。準決勝ではDFに人数をかけて守備的に臨んだが、DFラインの前でプレスをかけられず、アウボラーダの攻撃陣に簡単にゴール前まで運ばれたり、シュートを浴びたりする場面が目立った。序盤から失点を重ねたが修正が追い付かず、早く対応しようとするチームとしての意思が見えなかった。 九州が不安定で、まとまりを欠いたのも無理はない。大会直前まで2年以上、コロナ禍によってチーム練習が全くできなかったという。福岡、佐賀、鹿児島など各県に点在する選手は個人練習を重ねてはいたが、チームで集まるためには県をまたぐ必要がある。特に地方や離島在住者にとって、コロナに伴う移動の自粛要請や、県外に行きにくい状況は、練習の足かせになった。 「各々に職場や家族などの事情があり、これまでは『大会に参加する』と大きな声で言いにくかった。『集まって練習しようか』と言い出せる空気じゃなかった。チームはコロナの影響を受けてしまったし、まだ尾を引いている。今回は大会ができた、遠征して試合した実績ができたので、なんとかこれを機に違う流れになってほしい」。九州の野間口圭介選手は苦しい胸の内を打ち明けた。