片脚でも縦横無尽にピッチを疾走 東大出身のアンプティサッカー日本代表、 パラトライアスロンとの「二刀流」目指す
けがに加え、進学した高校のサッカー部が強豪だったこともあり、しばらくサッカーから遠ざかった。大学入学を機に打ち込んだボクシングは網膜剥離や右膝の悪化で競技を続けることを断念。2019年、大学院のサークルで義足を着けて久々に「遊びでやったサッカー」で、ボールを蹴る楽しさを思い出した。少し前に知人から聞いて記憶にあった「アンプティサッカー」という競技のことが、頭をよぎった。
ネットを検索し、ユーチューブで見つけたのは2017年のアンプティサッカー欧州選手権の決勝の映像。トルコのサッカースタジアムに集まった大観衆の前で繰り広げられた、強豪国のレベルの高い争いに目を奪われた。「これはすごい、やってみたい」と調べてたどりついた千葉(※1)のチーム練習に、19年8月に初めて参加。月末の公式戦に出場し、いきなり得点を記録した。 金子選手「最初は、腕を使ってつえで走ることのしんどさはありましたけど、ボールを扱うこと、パスを出すことへの難しさはなかったです。以前にやっていたサッカーの経験を生かすことができて、別競技というより『サッカーの亜種』という感じでした。右膝をプレーで使わないので(※2)けがを心配せずに自由にサッカーできる点がうれしかった。つえと片脚しか使えないことによる不自由さよりも、けがの心配がないことの方が大きかったです」 ※1:金子選手がプレーする千葉は20年からACミランの日本でのサッカースクールと提携して現在の「AC Milan BBee千葉」と改称し、選手たちは本国のミランと同じユニホームを着てプレーしている ※2:アンプティサッカーでは切断している側の脚や、つえでボールを扱うとハンドの反則となる アンプティサッカーには「日本代表に選出」「4年に1度のW杯出場」といった目標がある点も大きな魅力だった。2020年からのコロナ禍でチームの練習や国内大会、代表活動が中止になっても情熱は衰えず、競技にのめり込んだ。社会人フットサルチームを掛け持ちし、練習につえを使って参加、健常者のスピード感の中で技術を磨いた。日本トップクラスのフィジカルに、スキルも併せ持つ能力の高さを認められ、国内およそ100選手の中から十数人の日本代表に選ばれ、2022年のW杯東アジア予選とW杯本選に続けて出場を果たした。