片脚でも縦横無尽にピッチを疾走 東大出身のアンプティサッカー日本代表、 パラトライアスロンとの「二刀流」目指す
トライアスロンとサッカー、国際大会への思い
国際大会へのモチベーションは、金子選手をもう一つの大きなチャレンジへと突き動かした。「アンプティサッカーを始めて日本代表を目指したい、世界と戦いたいと思えたからこそ、東京パラリンピックでパラトライアスロンを見て、『パラ大会にも出たい』と思えるようになった」。アンプティサッカーはパラリンピック競技ではなく、金子選手はパラトライアスロンでメダル獲得を目指している。
トライアスロンでパラリンピックの出場権を得るためには、国際大会を転戦して世界ランキングを上げていく必要がある。金子選手はアンプティサッカーとの「二刀流」もにらみ、練習時間や合宿・大会参加の時間を捻出できるよう、今年7月に株式会社ジールに転職。研究職と2競技の両立に挑む「アスリート雇用」の道を選んだ。 「競技の両立はハードルが高いし、力の配分は自分でも難しいとわかっていますが、両方にいい影響が与えられそうな手応えもあります。トライアスロンは最大心拍に近いところで練習することもあってスタミナ面が伸びると感じていますし、プロアスリートに近い方と一緒に練習する中で、競技に対する意識の高さを学べています。パラリンピックはテレビなどでの露出もあるので、僕がトライアスロンで活躍できれば『アンプティサッカーもやっている』ことを伝えられる、競技をメジャーにできたらいいなという思いもあります」 そして、アンプティサッカーでも再び国際大会の舞台で戦うことを誓った。 「サッカーは幼いころからやってきて、やっぱり好きなスポーツなんだとアンプティを通じて感じていますし、続けていきたい。個人競技じゃなくて集団スポーツだからこそ、勝った時の喜びもあるし、意思統一が難しいからこそ、うまくいったときの快感というのは、サッカーじゃないと味わえない醍醐味です。もう1度W杯に戻って、リベンジしたい、もっと上を目指したい」
【メモ】アンプティサッカーとは…アンプティ(amputee)は英語で「切断した人」を意味する。脚の切断障害者が生活や医療用のつえ(クラッチ)を使ってフィールドプレーヤーになり、腕の切断障害者がGKを務める。ピッチの広さは通常のサッカーの半分ほど。GKはペナルティエリアを出ることが禁止され、6人のフィールドプレーヤーでピッチをカバーする。試合は25分ハーフで行われ、オフサイドはなく、試合中の交代は自由。米国人の切断障害者が1980年代に発案し、負傷兵のリハビリの一環として広まり、現在は世界連盟に30カ国以上が加盟する。日本では2010年に競技が本格スタートした。
11月3日から日本選手権
アンプティサッカーの国内チャンピオンを決める「第12回日本アンプティサッカー選手権大会」が11月3、4日に川崎市で開かれる。入場無料。試合日程など詳しい情報は日本アンプティサッカー協会のサイトで確認を。金子選手は今大会は欠場予定。