岩手発・ヘラルボニー「福祉×アート」その先へ ネクタイは3万円台 商品の魅力で選ばれるブランド力を強化
「異彩を、放て。」をミッションに掲げ、「福祉×アート」の分野で急成長しているスタートアップ企業・ヘラルボニー。 双子で、ともに代表取締役の松田崇弥さん・文登さんが2018年に地元・岩手県で創業。以来、崇弥さんは東京、文登さんは盛岡と、それぞれを拠点にしながら、2024年にはパリに現地法人を開設し、海外進出を果たした。 その様子は9月20日、テレビ東京の『ガイアの夜明け』で取り上げられ話題になったばかり。盛岡市内の本社で松田文登さんを取材した記事を前後編に分けて掲載する。 【写真】3万円台で販売しているヘラルボニーの「アートネクタイ」、日本の伝統的技術と“異彩作家”がコラボレーションして生まれたもので唯一無二の存在感が光る
(前後編の前編/後編はこちら) ■“異彩作家”に支えられる会社 知的障害のある作家の手がけたアートを、さまざまなプロダクトや空間デザインとして展開し、作品のロイヤリティ(使用料)を作家に支払う。これがヘラルボニーの事業の基本的な構造だ。 ヘラルボニーでは作家たちを“異彩作家”と呼ぶ。「異彩作家の作品があるから、ヘラルボニーがある。僕らが障害のある人たちを支えていると思われがちですが、実際には僕らが異彩作家たちに支えられているんです」と文登さんは言う。
2人がヘラルボニーの前身「MUKU」の活動を始めたのは2015年。 それから10年足らずの間に、自社ブランド商品だけでなく、JR東海による東京駅構内の装飾、JALビジネスクラスのアメニティポーチといった大手企業とのタイアップ企画まで広がった。 【写真をすべて見る】ヘラルボニーの多彩な才能があふれる商品や松田兄弟の幼少期など(9枚) 年々、ライセンス契約を結ぶ異彩作家は増え、2024年8月時点で国内外に約240人。取り扱う作品数は2000以上に上る。
作家に支払ったロイヤリティの総額は過去3年間で15.6倍に増加。作家の家族から「初めて確定申告をした」「障害のある子どもの将来が不安だったが、希望を持てるようになった」といった声が届いているという。 ■商品の魅力で選ばれるブランドに ヘラルボニーが展開する自社ブランドのオンラインストアには、ネクタイやワンピース、Tシャツ、名刺入れ……アパレルからライフスタイル雑貨まで多種多様なアイテムが並ぶ。どれも異彩作家の作品を大胆に全面で展開しているのが特徴だ。