ただ早く会社を辞めたかった、それだけなのに…。早期退職を夢見て資産2,000万円を貯めた54歳会社員、わずか半年で数百万円を失い涙「あまりに愚かでした」【FPの助言】
54歳の佐藤賢治さん(仮名)は、早期退職を夢見て貯蓄2,000万円を築いてきました。早く早期退職を実現したいと、投資をスタートした佐藤さん。順調な運用結果に味をしめた彼は、さらなる儲けを狙いハイリスクな商品に手を出してしまいます。最初は順調に利益を上げていたものの、相場の急変に翻弄され事態は深刻な方向に……。彼はこの試練を乗り越えることができるのでしょうか? 今回は佐藤さんの事例を通して、投資のリスクと老後への備えについてFPの青山創星氏が解説します。 【早見表】年金に頼らず「1人で120歳まで生きる」ための貯蓄額
早期退職を夢見てコツコツ積み立てた貯蓄2,000万円
佐藤賢治さんは、54歳で独身のサラリーマンです。現在の年収は500万円。早期退職を夢見てコツコツと貯蓄を重ねてきました。飲み会や外食を控え、同僚や友人たちが楽しんでいる姿を見ながらも、自分を律する日々を送る佐藤さん。それもこれも「早く仕事を辞めてストレスから解放されたい」という一心からです。 定年後65歳まで働くのなんて辛すぎる。60歳、いや50代で仕事を辞めたい……。佐藤さんはそう考えていました。佐藤さんの会社では、財形貯蓄制度の利用者には3%の奨励金が支給され、とてもお得で安全に貯蓄することが可能でした。その制度を利用して少しずつ積み立てた結果、手元には2,000万の貯蓄ができていました。 そんな中、知人が投資で100万円を1億円にしたという話を聞きました。それが佐藤さんの心に火をつけます。2,000万円という資産は決して少なくはありませんが、早期退職をするには十分とはいえません。 このままでは早期退職は夢のまた夢と感じていた佐藤さんは、とうとう投資の世界に足を踏み入れる決意を固めたのです。
インデックス型の投資信託で得た成功体験に歓喜
佐藤さんは、まず財形貯蓄2,000万円のうち1,000万円を払い出すことにしました。会社の総務課に払い出しの申込書を提出してから5日間ほどで預金口座に入金され、証券会社の口座に送金することができました。 まず購入したのが、世界の株価に連動するインデックス型の投資信託です。多くの個人投資家が「低リスクで確実に増える」とおすすめしている投資信託でした。 「1日でも早く運用に回して、早く儲けを得たい」という気持ちから、佐藤さんは思い切って1,000万円分を一括購入しました。 ちょうど相場が好調だったため、投資は順調そのものでした。購入した世界株は、なんと3ヵ月で1,000万円が1,080万円になりました。貯金では決してこのようなスピードで増えることはありません。 さらに利益を上げたいという欲望が膨らむ中、佐藤さんがネット検索をすると、「レバナスで送り人」「レバナスでFIRE」などの言葉が飛び込んできました。レバナスというのはブル・ベアファンドの一種で、ナスダック100指数に連動するレバレッジ(てこの原理)の効いたETFや投資信託のことです。 ナスダック100指数は、世界株の指数に比べて値動きの大きい指数です。その指数にレバレッジをかけるため、レバナスはハイリターンを狙えますが、当然リスクも高い商品です。 リスクのことはわかっていたものの、成功の甘い味を知った佐藤さんは、この相場なら大丈夫だろうし、少しでも早く投資の利益を増やしたいと考えました。そして、同じ投資額で2倍の利益を狙える2倍レバナスに手を出すことに決めました。この投資でどれだけの資産が増えるのか。心躍る思いで新たな投資の扉を開くことにしたのです。 そして、2倍レバナスに投資してからたった3週間で、1,080万円が1,120万円にまで増えました。世界株に比べてものすごいスピードで増えていきます。 すっかり投資のパワーに魅了された佐藤さんは、財形貯蓄の残り1,000万円全部を払い出すことにしました。そして、さらに今までの投資資金にこの1,000万円を加えた全額を、レバレッジの効いた3倍レバナスに投じることにしました。 しかし、そこには落とし穴が待ち受けていたのです。
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