労働組合はなぜ弱体化したのか グーグルや大学生が結成の動き「本気で戦う組合必要」
不況に国際化…「賃金より雇用」優先
高い賃金が欲しい。長時間労働やハラスメントをなんとかしたい──。どこの職場でも起こり得る問題を、職場の仲間と連帯して解決しようとするのが労働組合の原点だ。 しかし、労働組合の存在意義が、いま大きく揺れている。 日本の雇用慣行には「終身雇用」「年功賃金」「企業別労働組合」などの特徴があるが、いまではこうした雇用慣行は消えつつある。労働組合もまた例外ではない。2022年6月末時点での労働組合の推定組織率は16.5%。もはや労働者の8割以上は労組に加わっていないのが実情だ。非正規労働者でも組合をつくるケースが増えてきてはいるが、短期しか働かないため組合加入資格がないケースもあり、より状況は深刻だ。
労働組合の弱体化はなぜ起きたのか。 それは日本経済の停滞と深く関連する。日本経済はバブル崩壊の影響を受けて1990年代末から2000年代初頭にかけて深刻な不況期にあった。不良債権問題も表面化し、1997年には北海道拓殖銀行や山一證券などが相次いで経営破たん。雇用や設備などが過剰だとされ、「選択と集中」のかけ声の下、リストラが広がった。1998年以後は自殺者が14年連続で3万人を超えた。 独立行政法人労働政策研究・研修機構リサーチフェローの荻野登氏は、この時期に労組の力が弱まったと指摘する。 「当時、会社がつぶれるかどうかというなか、組合は賃上げ要求できる状況ではなかった。そうなると、労使は協調して苦境を乗り切ろうと務める。不況の時ほど、労組は経営陣の主張を受け入れる傾向が強まるのです」
その結果、労働組合は雇用の確保を優先し、賃上げについては一定程度の抑制もやむを得ない、という方針を選択。「賃金より雇用」というスタンスをとった。だが実際には、企業は希望退職者を募り、リストラが加速することになった。 同時に、経済の大きな変化、グローバル化の波も影響したと荻野氏は言う。 「グローバル化の進展で競争相手が国内の企業ではなく、海外の新興国となった。当時の日本の給与はアメリカやドイツ並みに高額だったが、一方で中国は日本の20分の1の人件費。『世界の工場』といわれ、中国での現地生産が拡大し、商品価格も下落。日本の製造業の業績が悪化していった。その結果、人件費のさらなる削減が要請され、正社員が減り、非正規雇用が増えた。労働組合の組合員もおのずと減っていったのです」 こうした変化の過程で、力を失っていったのが「賃上げ」闘争である「春闘」だ。