労働組合はなぜ弱体化したのか グーグルや大学生が結成の動き「本気で戦う組合必要」
「外資系IT企業には業績次第ですぐに解雇する会社もあります。でも、グーグルは『社員を大事にする』と入社時に聞きました。それが突然リストラを行った。やり方も一方的で、退職を受け入れるまで繰り返しメールを送りつけ、個別の面談で『辞めないならハラスメントを受けるよ』と恫喝まがいの言葉も口にした。日本の労働法制では条件が整わなければ解雇は無効です。これを見過ごせば、他の外資が『あのグーグルでも強引なリストラをするのか』と悪影響を招きかねない。そうなってはいけないし、労使で話し合いをすべきだ、とユニオンを結成しました」 メールを受け取った7~8割がすでに退職しているという。それでも残る意思を示した人たちや、今回のグーグルのやり方に不満を持った社員70人超が労働組合の結成に立ち上がった。3月の団交は妥結しなかったが、今後もグーグルジャパンユニオンは労使交渉を続けていくという。
“御用組合”に不満「バイトだって労組つくれる」
3月19日、東京駅八重洲地下街の飲食店の一角。チノパンにジャケット姿の青年がエプロン姿の店長に賃上げ要求が記された用紙を手渡した。 「いま1200円の時給ですが、とても見合っていない。物価高騰で生活も苦しいので、当然の対価として賃上げを要求しました」 断固たる決意を示すのは、回転ずしチェーン「スシロー」のヤエチカ店でアルバイトとして働く大学2年生のAさんだ。埼玉の別店舗で働く大学生Bさんらとともに昨年8月に「回転寿司ユニオン」を結成。10%の時給アップを掲げ、12月に運営会社「あきんどスシロー」と団体交渉を始めた。
「募集要項に『昇給制度あり』と記されていましたが、職能給はわずか5円しか上がっていません。地方のパートさんは最低賃金に近い数字で働いている。自分の店舗は人手不足の中、1人で何役もこなすという過酷な労働です。魚を一枚一枚スライスしたり、ネタの解凍、食器の片付け、お客様対応など一人で何役もこなさなければならない。まったく割に合わない状況です」(大学4年のBさん) アルバイトの立場ながらユニオンを結成した理由をAさんはこう述べた。 「アルバイトだって組合をつくれる。おかしいと思えば声を上げたらいい。これまで日本企業では、経営側と近い組合員による“御用組合”が何もしてこなかったから、非正規労働者が経営側にいいように使われる労働環境になってしまった。本気で戦う組合が必要なんです」