労働組合はなぜ弱体化したのか グーグルや大学生が結成の動き「本気で戦う組合必要」
今年の春闘は、大企業で満額回答など高い水準の賃上げが相次いだ。春闘において経営側と賃上げや権利向上などの交渉を行うのが労働組合だが、加入者は年々減少し、現在の組織率は労働者全体の16.5%と過去最低だ。一方、GAFAの一角を占めるグーグルの日本法人や、回転ずしチェーンのスシローで、労働組合の新しい動きが生まれている。なぜ労働組合は弱体化し続けているのか。(文・写真:ジャーナリスト・岩崎大輔/Yahoo!ニュース オリジナル 特集編集部)
「あのグーグルでも」他の外資への影響を懸念
まだ日も高い3月17日夕方。東京・恵比寿駅近くの広場には70人ほどが集まっていた。アジア、欧米などさまざまな地域からやってきた人たちが並ぶ。グーグル日本法人の労働組合「グーグルジャパンユニオン」の人たちだ。表情には一様に不安さが宿る。 「みなさん、暴力との誤解を受けないよう、絶対に相手と物理的な接触をしないよう、注意してください。今日の目的はまず話し合いを持つことです」
個人での加入ができる労働組合「東京管理職ユニオン」の書記長・神部紅さんが、集まった人たちに声をかける。彼らが向かうのは、グーグル日本法人の幹部との団体交渉の場。同社から送られた早期退職勧奨メールに対して、その撤回などを求めるのが目的だった。 今年1月、米国のグーグルは業績悪化を受け、全世界で約1万2000人の従業員を削減すると発表した。日本法人でも3月2日、個別の社員宛てに退職勧奨メールが送られた。 「今日から14日以内に辞めたら9カ月分の給与を上乗せする」 同社の一般的な報酬は年契約で、現金と株式で支払われる。職種や契約で株式の割合が異なる。「9カ月分の上乗せ」は基本給のみ。おおむね基本給1年分の1~2割のボーナスは含まれず、必ずしも好条件とはいえない内容だった。 グーグル日本法人で働く社員は世界各地で採用され、日本に派遣されている。就労ビザで入国している彼らは、解雇となればそのビザが無効になるため、出身国への帰国を余儀なくされる恐れもある。突然の解雇は生活設計をすべて壊すことになる。 同社のエンジニア、橋本良さんはCEOからのメールの後、オンライン会議で米国社員の姿が突然消えていることに気づいた。米国ではすぐに解雇が始まっていた。そうであれば、日本で同じことが起きる可能性が高い。解雇リスクへの自己防衛を考え、橋本さんが中心となって2月16日に「グーグルジャパンユニオン」を結成した。橋本さんには「解雇メール」は届かなかったが、届いた人には妊婦や病欠の社員が「狙い撃ちのように」含まれていた。