大企業とはこれだけ違う…日本人の「賃金値上げ」、企業間格差は今後なくなるのか…はたらく人を守る「連合」会長にその現在地を聞いてみた
現場を見て知った、若者とのギャップ
一方、若者を中心に“組合離れ”が叫ばれて久しい。組合の組織率は下がり続けており、組織率のアップも課題の一つだ。 「そもそも労働組合って暗くて硬くて恐い感じじゃないですか。男性ばっかりですし。そうすると、若者たちだとか、女性って入りたいと思わないですよね。 今、組織率が16.4%なんですね。圧倒的に労働組合の無い所で働いている人たちがたくさんいるんです。今年の賃上げで労働組合があった所のほうが賃上げ率も額もやっぱり高いんですよね。 それは組合があるからこそ、会社に要求書を出して会社と協議、交渉して私達の処遇を決めていくので、労働組合がなければ交渉できないじゃないですか。来年の春闘の方針の中では、組織作り、組合作りなども強化して行くというのも盛り込んだんです」 なぜ組織率はこんなに低いのだろうか。 「一つは、労働力人口っていま逆三角形じゃないですか。自然減はまず多いですよね。定年退職するとみんな非組合員とか組合から外れる。それとM&A(合併・買収)などによって組合が有る所と無い所が合併した時に、(組合が)無くなるケースが非常に多いんですよ。 あと、組合に入っていなくても労働組合があれば、結局入っていない人たちの労働条件は一緒なんですよね。そうすると入っても入っていなくても一緒じゃないかと言って、組合を脱退されたりだとか、入らない人が多かったりとか、そういう悩みを抱えている組織もたくさんあります」 連合のトップとして一番大切にしていることを聞いたら、即答だった。 「現場。職場です。組合員の職場です」 「(能登半島に)のべで今3000人ぐらい現地に連合ボランティアを派遣しているんですけれども、私も空いている時は被災地にずっと毎週入っていて、そこに来ている組合員の皆さんと対話して、連合をどう見ているのか、今の組合活動をどう見ているのか、そういうボランティア活動を通じながら、皆さんと対話をしながら情報収集しています。現場大好きです、私。ここ(会長室)に居るより現場大好き。怒られちゃう(笑)」 最近の若い人たちは、昔ほど賃金が上がらないし、ハラスメントやコンプライアンスについては厳しく問われ、働き方改革を言われつつ、成果も求められていると感じる。最後に、現場を周っていて、若い人たちの疲弊を感じないかと聞いた。 「なんだろうな、価値観がすごく変わってますよね。それこそ組合活動にはあんまり参加しなくてもボランティア募集とかっていうと、そっちにはみんな行ったりだとか、環境問題を一生懸命やったりだとか。企業とか労働組合って所詮、この器の中の活動になってくるので、もっとこれをグローバルにして行く必要があるかなと思うんですけど。 あとは今の若い人たちって、例えば一人っ子とか兄弟も少なかったりとか、人と人とのコミュニケーションなども対話というよりは、ラインとかメールとかというふうになってきているので、“心と心が向かい合う”ということがすごく弱くなっていると思うんですよね。 でも、そこがきちっと重なり合うと、仲間意識ってガッとくるので組合活動もやはりその“心が動くような活動”をして行かないと組織化にも結びつかないし、職場の組合活動にも向いてこないと思いますし、そういうことじゃないかなと思います」
春川 正明(ジャーナリスト)