まるで崖に立つ家!? 「庭がほしい!」を建築家が驚きの発想で解決、”縁側”兼”空中庭園”で眺望抜群の住宅に
事前のヒアリングで生活のイメージを共有していたことで、江島さんはおふたりの生活にこの土地が合うと考えたのだそうです。 「言葉の端々から、敷地の中に閉じこもるのではなく外に向かって開いていく暮らしぶりが合うだろうと感じていました。庭という言葉からは、屋外での活動を介して地域と繋がる豊かさを、縁側という言葉からは内と外の中間領域となる空間でゆったりとした時間を過ごすイメージを受け取りました。選んだ土地は、丘陵地ならではの特性が強くあらわれた土地です。この土地に根ざした生活という意味で、家から見える風景も含めて自分の庭のように過ごせる住宅を土地と合わせて提案しました。当初の要望とは反する提案ではあるので、改めて前田さんが庭や縁側になにを求めているのかを掘り下げることで、求めていることが達成できることは確認していきました」(江島さん) 旗竿形状の土地であることや通常は建築対象とされない擁壁が土地に含まれていることから実質的な有効面積が限られ、周辺の相場よりも価格が抑えられていたという対象敷地。しかし擁壁に構造耐力上の問題が生じない限りにおいては、上部に架構を張り出すことは建築基準法上問題はありません。1.5間(2,730mm)モジュールの木造軸組みは、身体スケールに沿った心地よさと、構造・経済合理性を兼ね備え、なおかつ床を張り出して生活に必要な面積を確保するうえでも最適な架構でした。 不動産市場における建築可能範囲と建築基準法上の敷地面積とのギャップを有効利用する建築的なアイディアによって、当初の想定にはなかった条件の敷地を購入することが決まりました。
拡張可能な梁が生む、住むことへの主体性
この住宅最大の特徴である、道路側へ突き出した10本の梁。なぜこのようなデザインが生まれたのでしょうか。 「眺望を生かすため、道路側に開く立ち方や建物から梁を突き出してテラスにする方針は、土地が決まったと同時に固まっていました。擁壁部分は法規的には建築可能ですが個人住宅でこのような立ち方をする例はほとんど見たことがありません。また一般的に、専用住宅は敷地の内側に閉じて家族間の関係性だけで暮らすことのみを前提にしがちですが、そうではない暮らしもあり得ると問いかけるものにもなると思いました」(江島さん) 「最初の提案を見て、素直に格好いいなと思いました。この土地のポテンシャルを最大限引き出すデザインを考えてくれたことも嬉しく、気に入りました。建築家に設計を依頼したいと考えていたのは、こういった僕らの発想にはないアイディアを見たいという思いがあったからです。どうやって住みこなし、自分たちの家にしていくか、ワクワクしましたね」前田さん(夫)
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