長男1人に5000万円の教育費。世帯年収700万円でさせたアメリカ留学の“大きすぎる代償”
人生100年時代の折り返し地点で、人は多くの問題に直面する。親の介護や病気、夫婦仲の冷え込み、子供の問題……。クリアが困難な“無理ゲー”の数々をどう解決すればいいか? 令和の家族メンテナンス法を探った。 ⇒【写真】教育費がかかりすぎたためマイホームを諦めた片岡さん。家族で集まれる場所がなく、リモートで顔を合わせる機会が多いとか
私立中学の受験を勧められたのが運命の分かれ道に
「常に家計は火の車です……」 そう話すのは、学生寮の住み込み寮長として働く片岡恭平さん(仮名・57歳)。私大に通う長女と米フロリダ大学に留学した長男に計7000万円の教育費がかかったという。 「2人とも地元の公立小学校に通ってましたが、公立は教育水準が低いという理由で先生から私立中学の受験を勧められたのがきっかけでした」
息子がフロリダ大学に編入できたのは誇らしかったが…
長男は都内の中高一貫校に入学。短期留学を経験したことで海外志向が芽生えた。 「アメリカの大学に行きたいと言いだした。語学学校、コミュニティカレッジを経て、フロリダ大学に編入できたのは誇らしかったですが、留学費用が円安の影響で3000万円もかかりました。今年卒業しましたが……長男の教育費だけで計5000万円近くかかっています」
子どもが卒業しても老後が不安
世帯年収700万円ほどの片岡家にとって、あまりにも大きい代償だった。 「今は夫婦で学生寮に住み込みで働いており、家賃、光熱費、食費がかからないから、ギリギリやっていけてるだけ。長女は来年から大学院に行きたいと言ってるので、給料のほぼすべてを子供に回す生活はあと2年ほど続きそう」 問題は、老後の不安だ。 「昔買った株が少しありますが、老後資金の準備が間に合ってません。妻は『マイホームが欲しい』と言ってましたが、とうの昔に家を買うのは諦めました。少しでも長く働きながら、株が値上がりし続けることを祈ります」
子供の教育に過剰にお金を注ぎ込む家庭は増えている
実は、こうした家庭は増えている。ファイナンシャルプランナーの黒田尚子氏が話す。 「子供の教育に過剰にお金を注ぎ込むことは、老後を犠牲にする行為。結果的に、子供に老後の面倒を見させる行為にもなりかねません。実際、日本人の生涯医療費は平均2800万円ですが、その半分が70歳以降に発生します。自己負担割合が2割なら300万円で、別途、平均して介護費用は500万円、老人ホームへ入居するなら1000万円ほどかかる。 将来発生しうる支出と受け取る給料や年金から逆算して、教育費を設定するべきなのです。今からでも、お子さんには奨学金を利用してもらうなどして、老後資金の確保に務めるべきです」 子のための投資が自分の老後のためとなってはならない。