「40年ルール」見直しで再稼働する老朽原発――危険性はないのか?自治体の困惑と期待
冒頭の美浜原発3号機は、運転開始から40年が経った2016年11月、「例外的に」20年の運転期間延長認可が出た。今後さらにルールが変われば、運転開始から60年を超えても運転を続けることができる。 老朽原発の運転延長認可の取り消しを求める行政訴訟を行っている「老朽原発40年廃炉訴訟」弁護団で事務局長を務める藤川誠二弁護士は、厳しい口調でこう語る。 「福島第一原発事故の最大の教訓の一つとして『40年ルール』が作られた。よく『民主党政権下で作られた』と言われるが、当時野党だった自民党と公明党と3党で合意して決まった法律です。国民の代表である国会で、しかも超党派で法改正したという事実は重いのではないか。それがわずか11年で変えられるというのは驚くばかりです」
確かに「40年」という期間は一つの目安に過ぎない。しかし、当時もその点を議論した末に法改正がなされている。 当時の国会では、細野豪志環境大臣が40年の根拠として「圧力容器の中性子の照射による脆化(ぜいか)」などを挙げ、「原則として 40 年以上の原子炉の運転はしない。経年劣化の状況を踏まえて、延長する期間において安全性が確保されれば例外的に運転を継続するが、極めて限定的なケースになる」と述べている。 エネルギー産業に詳しい、国際大学副学長の橘川武郎さんも40年ルールの見直しには疑問を呈する。 「福島の事故は古い1号機が爆発したというのが肝です。もし1号機が持ちこたえていたら他の爆発もなかった。この1号機の運転開始が1971年3月26日で、事故を起こしたのがちょうど40歳の誕生月だった。そうしたことを踏まえて自民党と公明党も賛成して法改正をした。それなのに唐突に海外の事例を持ってきて『40年には根拠がない』というのは言語道断です」
老朽原発が危険な理由
では、老朽化した原発のどこに危険性があるのか。藤川さんと同じ弁護団に名を連ねる小島寛司弁護士は「原子炉とケーブルの劣化」を挙げる。 原子炉の劣化は、細野大臣も挙げていた「圧力容器の中性子の照射による脆化」のことだ。 「原発を運転すると、核燃料で核分裂が生じますが、その際に中性子が発生します。金属は中性子に触れると、原子の並びが悪くなり、金属がもろくなるという問題があります。これが『中性子照射脆化』と呼ばれる現象です。原子炉容器は交換が難しく、ずっと使っているものなので老朽化による事故が懸念されます」