「40年ルール」見直しで再稼働する老朽原発――危険性はないのか?自治体の困惑と期待
2011年の東京電力福島第一原発の事故以降、美浜原発は1~3号機すべて運転停止となり、その間は定期検査の作業員が不要になった。そのため、周辺にあった民宿はほとんどが廃業したという。それでも約10年の運転休止を経て、3号機は再稼働を果たした。 澤田さんは美浜原発との付き合いはこれからも続くと考えている。なぜなら、仮に原発が新設・増設されるとしても、すでに原発がある場所にしかつくれないと思うからだ。 「なんで福井県が犠牲にならなあかんのやとも思うけど、これはもう仕方がない。自分たちはリスクを背負って生きているんです」 原発が立地自治体に経済的な恩恵を与える一方、大きなリスクにもなる――。澤田さんの言葉から改めてその現実が伝わってくる。
「40年ルール」撤廃の動き
美浜で始まった老朽原発の再稼働。いま、各地で同じ動きが出始めている。 きっかけは8月24日にトップが出した指示だった。政府のGX(グリーントランスフォーメーション)実行会議の場で、岸田文雄首相は「原発の運転期間のルールの見直し」と「次世代革新炉の開発・建設を進めること」の検討を加速するよう指示した。これまで抑制的だった原発政策を大きく転換させるものだった。 2012年に原子炉等規制法が改正され、老朽化した原発を運転させない「40年ルール」が定められた。原発は認可を受けた日から40年後までに運転を終えるのが原則。40年経過した時点で安全性が確保されれば一度に限り20年の運転延長が認められるというものだ。 経済産業省が9月22日に行った論点整理では、「多くの国では運転期間の上限はない」「米国では80年延長認可を取得した原子炉は6基」「40年は一つの目安であり、明確な科学的な根拠はない」などと従来とは打って変わって、運転長期化を支持した。 さらに11月2日の原子力規制委員会では、運転30年超の原発について10年ごとに審査・認可し、60年超も可能という新制度案が示された。この案では年限自体に縛りがなくなる。