ビジネスマンのための会計学…「複式簿記」から学ぶ「会社のお金」の超キホン【公認会計士が解説】
会社の会計が分からないというビジネスマンは少なくありません。ここでは複式簿記の基本的な考え方から、会社のお金の流れについて学びます。税理士・公認会計士の岸田康雄氏がやさしく解説します。 【早見表】年金に頼らず「夫婦で100歳まで生きる」ための貯蓄額
どうして「簿記」が必要なのか?
企業には、商品を販売する会社、物を作る会社、お金を扱う会社、物を運ぶ会社など、さまざまな種類があります。 たとえば、商品を販売する会社が事業を続けるためには、お店を開いたり、商品を並べる棚を買ったり、従業員に給料を払ったり、電気代などの経費を支払ったりします。 しかし、これらを実現するには「お金」が必要です。お金が足りないときは、銀行からお金を借りたり、仕入れ先に「商品の代金は後で支払います」とお願いしたりすることもあります。これらの場合、将来、銀行や仕入れ先にお金を支払う義務が生まれます。 反対に、お金に余裕があるときは、銀行にお金を預けたり、お客様に「商品代金の支払いは後でいいですよ」と言って売ったりすることもあります。これらの場合、将来、銀行やお客様からお金を受け取る権利が生まれます。 企業が持っているお金や商品、また借りているお金や貸しているお金の額は、日々の活動によって常に変わっていきます。そのため、これらの変化や残高を正確に把握するために、帳簿に記録することが必要になります。これを「記帳」と呼びます。 企業は、経営活動に伴って生じるお金や商品などの財産、また借りているお金や貸しているお金などの変動を、決められたルールに従って帳簿に記録します。そして、1年毎にその結果をまとめた報告書を作ります。この一連の手続きを「簿記」と呼びます。
簿記が持つ「3つの目的」とは?
簿記の目的は、3つあります。 1つは、日常の財産管理に役立てることです。毎日帳簿に記録することで、企業が持っているお金や商品、借りているお金や貸しているお金をいつでも知ることができます。これによって、お金や商品がなくなってもすぐに気づきますし、お金を回収し忘れたり、同じ支払いを2回してしまったりするような間違いを防ぐことができます。 2つ目は、企業の経営成績を明らかにすることです。一定期間に、仕入れや販売などの営業活動を行った結果、どれだけ儲かったか、または損をしたかを知ることができます。 そして3つ目が、企業の財政状態を明らかにすることです。ある時点で、企業がどれだけのお金や商品を持っているか、どれだけ借金があるかなどを明らかにすることができます。 簿記によって、経営者は毎日の財産管理ができ、会社の経営成績や財政状態を知ることができます。これによって、これまでの経営のやり方を振り返り、将来の経営方針や計画を立てるのに役立ちます。