ビジネスマンのための会計学…「複式簿記」から学ぶ「会社のお金」の超キホン【公認会計士が解説】
簿記が「社会全体に重要な役割を果たす」ワケ
一方、会社の経営成績や財政状態は、経営者以外の人々にとっても重要な情報となります。 株主や投資家は、今までの投資が成功したかどうか、これからも投資を続けるべきかを判断するのに使います。 取引先や銀行は、貸したお金や利息がちゃんと返ってくるか、これからもお金を貸すべきかを判断するのに使います。 従業員は、給料や労働条件の改善を要求する際の根拠として使います。 そして、国や地方自治体は、税金をいくら徴収するかを決めるのに使います。 このように、簿記は1つの企業だけでなく、社会全体にとっても重要な役割を果たしています。
「お金の動き&財産増減の理由」両方を記録する複式簿記
簿記には「単式簿記」と「複式簿記」がありますが、私たちは複式簿記を使います。複式簿記であれば、お金の動きと、企業の財産が増減した原因の両方を記録することができるからです。 例えば「トラックを買って、現金100万円を支払った」という取引があったとしましょう。 この仕訳は以下のように行いますが、これは、トラックを買うためにお金が100万円出ていったという意味です。 企業ではお金が出ていったことを記録するだけでなく、それが出ていった理由を記録するのです。ここではトラック(車両運搬具)の購入です。
簿記の用語
複式簿記では、1つの取引を2つの側面から捉え、それを左右に分けて記入します。左側を「借方」、右側を「貸方」と呼びます。 企業は継続して経営活動を行っているので、一定期間ごとに区切って、その期間の経営成績と、その期間の終わりの時点の財政状態を明らかにします。この期間のことを「会計期間」または「会計年度」と呼びます。通常は1年間です。会計期間の初めを「期首」、終わりを「期末」といいます。
資産
企業の営業活動の目的は、お金を増やすことです。しかし、お金を増やすには、商品を仕入れてきたり、商品を販売したりして、一時的にお金の形を変えなければいけません。商品を仕入れただけではお金は増えません。商品を販売したときにお金が増えるのです。そこで、お金が形を変えたことを記録するのです。 このようにお金が一時的に形を変えたものを資産といいます。 資産には、さまざまなものがあります。 現金を銀行に預けると、預金となることはわかりやすいでしょう。商品を後払いで売ったときには、お客様からもらうべきお金として売掛金が発生します。他人にお金を貸したときには、将来入ってくるお金として貸付金が発生します。 簿記の学習で基本となるのは、販売しようとして購入してきた物品である商品でしょう。また、営業用の店舗や倉庫などの建物、営業用のトラックや乗用車などの車両運搬具、営業用の机、椅子、事務機器などの什器備品、営業用の店舗や倉庫などの敷地である土地などがあります。