日本最古の歴史を誇る芝居小屋「京都 南座」:中村鷹之資が誘う歌舞伎の世界
歌舞伎発祥の地でさらなる飛躍を誓う
人間国宝だった父・五代目中村富十郎は、鷹之資さんが11歳の時に永眠。南座を訪れる機会は減ったものの、父と四代目(祖父)の墓所があるため、京都にはなじみがあったという。それでも顔見世時期の町の雰囲気は独特で、特に驚かされたのが「花街総見(かがいそうけん)」だった。 芸妓や舞妓が芸の肥やしとするため、顔見世興行を観覧する花街総見。京都に残る5つの花街ごとに総出で南座へ訪れ、あでやかな着物姿が桟敷席にずらりと並ぶ様子は圧巻である。役者名を描く「まねき看板」をかたどったかんざしを挿すのが習わしのため、ひいきの役者に名前を書いてもらおうと、幕間の楽屋にまでやって来たそうだ。 「初めての顔見世は、(中村)鴈治郎のおじさんと相部屋させていただいたので、すごい数の舞妓さんが押し寄せてきました。『何これ、顔見世ってすごい…』と衝撃を受けたのを覚えています。同時に、やはり京都には文化・伝統が生き続けているとも感じました。華やかではありますが、役者にとっては目の肥えたお客さんが集まるのが南座。気を引き締めねばなりません」
『有頂天家族』で主演し、今回の顔見世では『大津絵道成寺』の弁慶、『元禄忠臣蔵』の大石主税(ちから)、『越後獅子』と出番も多い。成長した姿を南座の観客に見せたいところだ。 「現代劇に初挑戦し、役者として進化できた部分があるし、歌舞伎の素晴らしさも再確認しました。顔見世も出演を重ねて大分慣れてきましたが、今年も新たな気持ちで舞台に立ちたいと思います。来年は大阪・関西万博もあるので、京都と歌舞伎の歴史を背負った南座へも、ぜひ足を運んでください」 撮影=松田 忠雄 ヘアメイク=花井 菜緒(JOUER) 取材・文=土師野 幸徳(ニッポンドットコム編集部)
南座「當る巳歳 吉例顔見世興行 東西合同大歌舞伎」
・開催期間:2024年12月1日~22日 ・開演時間:昼の部=午前10時30分~、夜の部=午後4時~ ・住所:京都市東山区四条大橋東詰
【Profile】
中村 鷹之資 本名・渡邊大。1999年4月、東京都生まれ。人間国宝・五代目中村富十郎の長男。学習院大学経済学部卒。2001年、中村大を名乗り初舞台。05年、「鞍馬山誉鷹(くらまやまほまれのわかたか)」で初代中村鷹之資を披露。