パウエル議長再任決まったFRB 新体制はタカ派? ハト派? 量的緩和終了は早まるのか
米FRB(連邦準備制度理事会)議長にパウエル議長が再任される方針が決まりました。それとともに副議長や理事の顔ぶれも新しくなります。米国の金政策に変化はあるのでしょうか。第一生命経済研究所・藤代宏一主任エコノミストに寄稿してもらいました。 【グラフ】もはや米国は「コロナバブル」ではない
●金融市場の受け止めは?
バイデン米大統領は次期FRB議長にパウエル現議長を指名しました。これを受けた米金融市場の反応は金利上昇にドル高、株式は弱含みでした。米金利は政策金利の見通しを反映する傾向にある年限(2年~5年)を中心に上昇。株式は上場企業全体の動きを反映するS&P500が小幅安(▲0.2%)、ハイテク株の比率が高いナスダックは2日続落(▲1.8%)となりました。 金利(債券)と株式のバランスを考えた場合、金利上昇、すなわち安全資産である国債価格の下落は、株式の相対的な魅力を落とし、株価の下落圧力となります。ナスダックの下落幅が大きかったのは、金利上昇に脆弱な成長株が多く含まれているためです。為替はFRBの利上げ観測が高まる下で、ドル高基調が持続しDXY(ドル指数)は上昇し、ドル円レートは約4年半ぶりの円安ドル高水準となる115円へと水準を切り上げました。 事前報道ではパウエル議長よりもハト派色(金融緩和に積極的)の強いブレイナードFRB現理事の指名を予想する見方もあり、人事案発表の直前にかけて“ブレイナード議長”の誕生に備えた取り引き(債券買い、ドル売り、株式買い)をする動きもありましたが、パウエル議長の続投が事実上決定したことで、そうした取り引きが解消された形です。
●FRBの新体制の方向性は?
ブレイナード氏は副議長に指名されました。FRBの新体制では同氏の発言力が増すことでFOMC(連邦公開市場委員会)参加者の総意が若干ハト派に傾斜する可能性があるでしょう。最近になってテーパリング(量的緩和の段階的縮小)の加速に言及するなどタカ派色(金融引き締めに積極的)を強めているクラリダ副議長が2022年1月末に任期満了となることを踏まえれば、常任投票メンバー(議長、2人の副議長、4名の理事、NY連銀総裁)の構成はハト派色が強まることも考えられます。 現在空席となっている理事(1人分)に加え、ブレイナード理事とクラリダ副議長の後任人事が重要になってくるでしょう。ちなみに最大18人のFOMC参加者のうち、政策金利決定への投票権を保有するのは12人です。8人は左記常任メンバー、4人は(NY連銀以外の)地区連銀総裁が1年ごとの輪番となります。