「男性として終わったような気がした」婚活や妊活で直面する男性壮年期の「勃起の悩み」 #性のギモン
コロナ禍を機にオンライン診療の実施要件が緩和され、初診からオンラインで受診できるようになった。これによって治療につながりやすくなったのが、勃起障害(勃起不全、ED)に悩む男性だ。ある男性患者は「オンラインがなかったら病院へ行かなかったかも」と話す。40代以上で婚活を始めたり、子どもを授かりたいと考えたりする男性も増えている。婚活や妊活でEDに直面した男性と、男性の性機能を専門とする医師に取材した。(取材・文:キンマサタカ/Yahoo!ニュース オリジナル 特集編集部)
交際相手とのはじめての夜 「お酒を飲みすぎたせいかな」
勃起不全は不意にやってくる。 北村泰人さん(仮名、40代)は都内在住の会社員。離婚歴があり、子どもはいない。半年ほど前に、マッチングアプリで知り合った女性と、結婚を前提に付き合うようになった。はじめて彼女と一緒にホテルに泊まった夜、どれだけ努力しても勃起しないことに気がついた。 「その日はお酒を飲みすぎたから、調子が悪かったのかなと思っていました」 北村さんの仕事はサービス関連業。責任ある立場を任されて久しく、共働きだった元妻とはすれ違いが多かった。「それが離婚の大きな原因だった」と振り返る。 離婚して1年以上が経ち、仕事はさらに多忙を極めた。朝から晩まで仕事の毎日でプライベートの時間はほとんどなく、誰かとセックスする機会には恵まれなかった。自分がEDに陥っているとは思ってもみなかった。 最初の失敗のときも、北村さんは深刻に考えていなかった。酒を飲みすぎると勃(た)たないことがあるのは、よく知られていることだ。 1週間後、酒を飲まずにトライしたが、うまくいかない。何度目かの失敗をした夜に、ようやく何かがおかしいと気づいた。憔悴する北村さんの背中を、パートナーがやさしくさすってくれた。 「今思えば、自分は男性として終わったような気がしたんでしょうね。ずいぶんと落ち込みました。それに、若いうちからEDになることもあると、知識としては知っていましたが、自分には関係ないと思っていたんです」 パートナーの助言もあり、北村さんはオンラインで泌尿器科のあるクリニックを受診。医師の問診で「勃起障害」と診断された。ED治療薬を処方され、翌日には自宅に薬が届いた。北村さんはそのスピード感に驚いた。