「男性として終わったような気がした」婚活や妊活で直面する男性壮年期の「勃起の悩み」 #性のギモン
「地獄のあとに天国を見た思い」 男性機能を失うことへの恐れ
勃起障害は、「性交を行うのに十分な勃起を達成できない、または持続できないこと」と定義される。勃起障害かどうかをチェックするには、「勃起の硬さスケール」が用いられる。アメリカで開発されたEHS(Erection Hardness Score)を、日本性機能学会が日本向けに改良したものだ。 スケールは、0から4の5段階に分かれている。 グレード0:陰茎は大きくならない。 グレード1:陰茎は大きくなるが、硬くはない。 グレード2:陰茎は硬いが、挿入に十分なほどではない。 グレード3:陰茎は挿入には十分硬いが、完全には硬くはない。 グレード4:陰茎は完全に硬く、硬直している。 順天堂大学浦安病院泌尿器科准教授の白井雅人医師によれば、「EHS 3以下は勃起障害と診断されます。2以下と3以上には大きな溝があり、膣内に挿入できるかできないかで、男性の生活の質にかかわってきます」(白井医師) 最大の要因は加齢によるもので、白井医師は「50代なら50%、60代なら60%という具合に、年齢=%の確率で発症します」と言う。40代でも約2割がEDの自覚がある。 高血圧や糖尿病、肥満、喫煙もEDのリスクを高める。そのほかに、慢性腎不全などの病気に起因するもの、心因性のもの、外傷によるもの、前立腺の手術の合併症として起こるものなどがある。まれにだが、一度も勃起したことがないというEDもある。 北村さんの症状は過労とストレスによるもので、薬で劇的に改善した。医師の指導のとおり、性交渉の1時間前に服用して行為に臨んだところ、勃起は硬さを取り戻し、最後まで衰えることはなかった。終わったあとにはパートナーと喜びを分かち合った。北村さんはその後も、定期的にオンラインで薬を処方してもらっている。パートナーとの関係も良好だ。めでたしめでたしだが、北村さんの本音は、それとは少し別のところにあった。 「彼女とセックスできたことより、『まだ男性機能を失っていない』という安心のほうが大きかったんです。それまで当たり前だと思っていたのに、突然勃起しなくなる。いずれ年老いたらそうなるのだろうとは思っていたけど、いざ自分がそうなると、『まだ早い!』というのが正直なところでした。薬で改善したときはほっとしました。地獄のあとに天国を見た思いでした」