「男性として終わったような気がした」婚活や妊活で直面する男性壮年期の「勃起の悩み」 #性のギモン
オンライン診療でも大丈夫? 「医師の処方であれば心配ありません」
北村さんと伊地知さんが医療にアクセスできたのは、パートナーの理解と後押しに加えて、オンライン診療の普及が大きい。北村さんは「オンラインがなかったら(病院に)行かなかったかもしれない」と言う。 コロナ禍でオンライン診療の実施要件が大幅に緩和され、2022年度からは初診からのオンライン診療が恒久的に認められるようになった。それにともない、オンライン診療に対応するクリニックは増えている。 勃起障害やその治療薬については、昔から真偽不明の情報や偽造品の通販サイトが存在していて、男性でも正しい知識を持っているとは限らない。オンライン診療に不安を感じる人もいるだろう。白井医師はこう話す。 「オンライン以外にも、駅前クリニックのような、簡単な問診で薬を出してくれるところもけっこうありますが、少なくとも医師が処方している限り、出しちゃいけない人には出しません。逆にいうと、医師がかかわらないものはあやしいと思ってください」 薬の効果はメンタル面にも表れるようで、北村さんと伊地知さんは「『これがあれば大丈夫』と思えるようになったのは大きかった」と口をそろえる。
年をとっても触り続けることが大事 「筋トレみたいなもの」
そもそも、ある日突然勃たなくなってショックを受ける前に、加齢によるEDを遅らせる方法はあるのだろうか。白井医師は「触り続けることが大事」と言う。 「オリンピック選手でも、日々筋トレをしなければ、金メダルは取れないですよね。その筋トレに相当するのが、ペニスを触ることだと思います。『性』は『生』きるにつながるとよく言うのですが、性機能は健康のバロメーターでもあります。生活習慣の改善は、性機能の改善につながります。おすすめはよく歩くこと。その点、女性の健康意識の高さに比べると、男性は甘いかもしれませんね。年だからしょうがないと諦めたりとか」 筋トレも、間違った方法で行えば体を壊す。性機能を健康に維持するには、不適切なマスターベーションをしない、刺激の強いアダルトビデオを見すぎない、なども注意点だという。 白井医師が所属する日本性機能学会をはじめ、いくつかの学会や団体が医科学的な見地から啓蒙活動を行っているが、十分に広まるまでには至っていない。 「私も数は少ないですが、学校で性教育の特別授業を行うようなときには、正しいマスターベーションの仕方とか、コンドームの正しいつけ方といった話はするんですね。ただ、今の学校での性教育は性感染症と妊娠のことが中心で、人生を通じて豊かな性生活を送るための教育はほとんどありません」 男性にとっても、性機能は人生の問題であり、幸福感やQOL(生活の質)に直結する問題だ。しかし、そういったことを学ぶ機会は少ない。 加齢によるEDも、どうすれば自分とパートナーを大切にできるかというふうに考え方を変えてみれば、無理やり勃たせるだけが答えではなくなるかもしれない。 「うまく勃たなくてもパートナーと仲良くしてねと、患者さんにお願いする場合もあります。挿入や射精にこだわらなくても、セックスで幸福を感じることはできますから」 --- キンマサタカ 1977年生まれ。大学卒業後、出版社に就職。2015年に独立。写真家としても活躍。著書に『痛風の朝』『文春にバレない密会の方法』など。 --- 「#性のギモン」は、Yahoo!ニュースがユーザーと考えたい社会課題「ホットイシュー」の一つです。人間関係やからだの悩みなど、さまざまな視点から「性」について、そして性教育について取り上げます。子どもから大人まで関わる性のこと、一緒に考えてみませんか。