【林業経営は大規模化すべきではない!】振り返るべき国有林事業の“失敗”、好調な木材需要に隠された非効率な作業の実態
大型集造材施設の功罪
話が専門的になりすぎて、分かりにくい部分も多々あったと思うが、丸太の生産にこれほど大きな集造材施設が必要であったか疑問は多い。ただそれなりの必然性はあったと思う。 その背景は、何と言っても豊富な森林資源、写真6に見えるような人工林が渺渺(びょうびょう)と続いていたのだ。木材増産の要請は時間がかかる林道の延伸を待ってはくれない。 そのためには、林道の先端から長大な主索を張って、1線で少しでも多くの木材を伐り出し、効率よく造材し、一時貯材し、スムーズにトラック運材する必要があった。したがって、その後に生じた振動障害対策とあわせて、盤台の大型化は必須だったと言えよう。 集造材作業は組作業で1セット10人ぐらいが配置されていた。作業主任者(安全担当)1人、集材機運転手1人、盤台作業(荷下ろし、造材等)4人、先山作業(荷掛)4人というように民間に比べると多過ぎると批判があった。しかし、それは木材価格が下降してきてからのことで、人数を減らして品質や安全が低下するのであれば、そもそも林業が経済ベースで成立しないということではなかろうか。 施設が大きいのなら、大きいなりの使い方がある。 この盤台の広さと3階建ての機能を活かして、丸太を規格ごとに仕分けるのである。写真3の盤台では左手から3、3、4、3、3、2mの長さごとに選別されているのがわかる。この盤台は長さが20m以上あるようなので、このような仕分けが可能だったようである。 筆者がいた営林署ではこのような長さはなかったので、末口径(丸太の先端に近い木口の直径)によって13㎝以下と14㎝以上の2区分に仕分けた。14㎝以上の丸太なら柱材以上の製材品ができるので、単価が断然高かった。 そして14cm以上は貯木場(営林署の施設)や木材市場(民間の施設)に輸送し、さらに土台角用、柱角用、板用などに細かく仕分けして競売にかける。13cm以下の小径材が混じっていないから仕分けの能率が上がるし、安物に市場手数料を支払う必要もない。さらに小径材は専門の製材所へ山元が直接販売した。山元から木材市場の間で積み降ろしがなく、市場手数料がかからない分、木材価格が安くなり、利ザヤの薄い小径材製材所にとってもいいことずくめだった。