【林業経営は大規模化すべきではない!】振り返るべき国有林事業の“失敗”、好調な木材需要に隠された非効率な作業の実態
伐倒した木をどう集めていたか
集材方式は地形急峻な内地ではワイヤーロープを張り巡らした架線集材、地形が緩やかな北海道ではトラクター集材が多かった。 図2は、国有林でもっとも多く使われたエンドレス・タイラー式である。太い主索は固定されているが、伐倒木を吊り上げる荷上索や、盤台へと運ぶための引寄索といった作業索は集材機のドラムに巻き込んで可動するようになっている。荷重がかかる主索の直径は一般的に22ミリメートル(mm)、元柱(もとばしら)と先柱(さきばしら)のスパンは長いものでは1000メートル(m)を超えた。 当時は林道の開設が遅れていたので、長スパンの集材でカバーしようと無理をしていた。深い谷越えの高高度・長スパンの主索も多かった。 設計図に基づいてワイヤーを張り巡らせていくのだが、組作業で行うので、全員が設計を理解した上で、チームワークよくやらないと、すぐに事故に結びつく。 これらのワイヤーの架設作業は重労働で危険を伴った。オイルが塗られたワイヤーを扱い、重い滑車を持って木登りするなど3Kの最たるものだった。 在日米軍のジェット戦闘機が山間部の入り組んだ谷間で飛行訓練をしており、しばしば主索を切断される事件も発生していた。しかし、戦闘機が墜落したとは聞いたことはなく、丈夫なものだと感心したものだ。
写真6のように主索の直下から伐開して、ワイヤーロープを張り上げたら、伐倒木を集材して盤台を組み上げる。谷筋のスギは成長もいいので盤台材にもってこいであるが、高く売れる木材なのでもったいなかった。盤台材にすると傷はつくし、キクイムシにも食われるので、売り物にはならなくなる。 こうして主索直下から、左右に伐採が広がっていく。荷掛用フックを伐倒木の位置まで引き込んで、伐倒木を掛け、主索直下まで引きずり出して(横取り)、それから空中に引き上げ、盤台の上空まで移動させて降ろす。主索直下と伐倒木の位置が離れていると、木材が林地を引きずられ、地上にある切り株や突き出た岩をなぎ飛ばす。 林地が損傷して、表層崩壊が起きやすくなった。一般に架線集材は林地に優しいと言われているが、現地では理屈どおりにはいかないものだ。