世界一の靴下屋を目指す「Tabio」、社名は「奥田民生さんに履いてほしい」から!? 人事部すらない、カリスマ経営者の会社を作り替えた2代目の思い
「靴下屋」「Tabio」「Tabio MEN」などの靴下専門店を運営・展開するタビオ株式会社。「靴下の神様」といわれた創業者で、父の越智直正氏から経営を受け継ぎ、社名変更など次々と社内改革を進めたのが、2代目の越智勝寛社長だ。カリスマ経営者が構築した会社を変えることには、大きな摩擦もあったという。「カリスマの次」の経営や「Tabio」の知られざる由来について、越智社長に聞いた。 【動画】なぜ事業承継が大切なのか専門家に聞いた。
◆「ものづくり現場優先」の組織に「顧客ニーズ」という発想を注入
――2008年の社長就任時、会社にどんな課題がありましたか? 会社の仕組みを作り変えること全般でした。 当時、売り上げも下がり、品質のよさを前面に打ち出して成長してきたのに、とうとう「3足1000円」のショップも出すまでになりました。 それでも赤字は埋められないような状況に陥っていたのです。 とはいえ、急いでV字回復を目標に…ということではなく、まずは時代と事業規模に合った会社に変えることが私の役目だと思っていました。 よくも悪くも創業者・越智直正の一存で動いてきた会社だったため、人事部もなければ社員の研修制度もない状況でした。 社員の配置も採用もすべて社長が決め、商品開発も営業まですべて社長の方針と感覚で進められていたのです。 幸い先代の周りに、創業者の考えを熟知、理解して、調整する優秀な社員がいたので成り立っていましたが、いよいよ回らなくなった。 そこで、私はタビオにとって必要な会社のあり方とは何かと考え、整えていきました。 ――具体的にはどのようなことを始めたのでしょうか。 まずは人事部を作り、社員教育の仕組みから構築しました。 また、マーケティングの仕組みを作り、顧客ニーズに合わせた商品構成や商品開発も始めました。 WebやSNSの情報発信にも力を入れました。 ビジネス用語でいえば、プロダクトアウト(作り手の理論優先)一本槍だったところに、マーケットイン(顧客ニーズ優先)の発想を取り入れていったということです。 商品の質には自信があったので、社内組織を整え、取引先と時代にあった付き合い方や決済のあり方を構築すれば、売り上げは必ず回復させられると思っていました。