世界一の靴下屋を目指す「Tabio」、社名は「奥田民生さんに履いてほしい」から!? 人事部すらない、カリスマ経営者の会社を作り替えた2代目の思い
◆変革を拒む会長、正攻法で説得
――2代目が従来のやり方を変えることを、会長となった先代は受け入れてくれたのでしょうか。 何をするにも大反対でした。 自分が完成させたものを変えられると我慢ならないという感覚は、私も分かります。 2006年の社名変更のときも、先代を説得するのはなかなか大変でした。 会長にとって「ダン」は思い入れのある社名でしたから。 さまざまなものを変更するとき、どのように周囲を説得したかというと、全役員の前で理論的にプレゼンテーションをしたのです。 私は、経営者研修を終えたばかりだったので、研修で習った分析方法などを活用して、数字とデータを示して「こうしたほうが合理的ですよね」と伝えていきました。 ――役員の反応はどうでしたか? 少しずつ役員の賛成を増やしつつ、最終的に会長にも認めてもらうというやり方で進めていました。 ただ毎回、すべて会長が目標としてきた「世界一の靴下屋になる」ことを達成するための提案だと丁寧に説明しました。 マーケットインへの転換といっても、完全にシフトするわけではありません。 そもそも当社は「ものづくり」を主軸としたプロダクトアウト型の会社です。 先代が大切にしてきたものづくりの理念は、忘れてはいけない。 プロダクトアウトとマーケットインのバランスを取るための調整が必要だったのです。
◆「タビオ」の社名、実は…
――大きな変革の一つが社名変更ですが、「タビオ」の名前の由来は何でしょう? オフィシャルには「The Trend And the Basics In Order (流行と基本の秩序正しい調和)」の頭文字をとったものと説明しています。 そして「Tabioをはいて地球を旅(タビ)しよう、足袋(タビ)の進化形である靴下をさらに進化させよう、という意味が込められています」と説明しています。 ただ、これははじめて公表すること話ですが、実はあるミュージシャンの方のお名前からの発想でした。 新しいブランドの名前を考えようと、当時商品本部長だった私ともう一人、豊田さんという元社員と、2人で頭を捻っていたんです。 その時、その豊田さんが「奥田民生さんに履いてもらえるようなブランドがいい」と言って、「タミオ」はどうかといってきたんです。 いくらなんでも、それは直接的過ぎるだろうと。 それで奥田民生さんのことを調べてみたら『股旅』というアルバムを発表されていますよね。 そこで「靴下」と「旅」っていいよね、となんとなく二人が共鳴しまして、「タミオ」と「タビ(旅)」をかけ合わせて「タビオ」にしました。