世界一の靴下屋を目指す「Tabio」、社名は「奥田民生さんに履いてほしい」から!? 人事部すらない、カリスマ経営者の会社を作り替えた2代目の思い
◆「世界一の靴下屋」とは
――社長就任時、どのような経営ビジョンを持っていたのでしょうか。 社長になりたいという気持ちはなかったので、ビジョンも無かったです。 社長を引き受けたときに考えていたのはただひとつ、会長の掲げた目標を叶えるために役割を全うすることだけ。 会長の目標とはすなわち、「世界一の靴下屋にする」ことです。 考え方は、私が平社員だろうと商品本部長だろうと販売本部長だろうと同じです。 たまたま社長を拝命したのなら、目標のために社長の役割を果たすだけです。 ただ、会長がいう「世界一」とは、売上高や事業規模など、数字で表される世界一ではありません。 先代も、それを望んでいませんでした。 日本のものづくりの技術で、世界中から「やっぱり靴下はタビオだ」といわれるブランドにしたいという思いでした。 世界一の基準は、会社それぞれにあっていいと思います。21世紀に入り、経営者の多くがユニクロの柳井さんのように、規模と利益で世界ナンバーワンを目指すようになりました。 しかし、今後は、それぞれの会社が自社にふさわしい目標を掲げ、それを達成する経営スタイルに変わっていくのではないでしょうか。 ――経営に関して、先代から学んだことはありますか。 父は中国の古典を大事にしていて、特に『孫子』が座右の書でした。 何事にも孫子の言葉を引き合いに出していたのが印象的です。 私も『孔子』や『孫子』に、ずいぶん学びました。 また、ものづくりへの純粋な思いや、取引先を大切にするところなどは、背中から学ばせてもらった気がします。 創業者はやはり特別です。 「ダン」をイチからつくれと言われても、誰も真似できません。 何もないところから事業を興すのは、常人では不可能です。 だから、そばで見聞きしても自分にはできないことや、真似しないほうがいいと思うところも多々ありました。 ずいぶん叱られたり説教されたりしましたが、辛いとか苦しいといった感覚はそれほどありませんでした。 きっと、父の人柄が魅力的だからでしょうね。 とにかく見ていておもしろい人でした。