「外国人観光客からぼったくっている」「日本の恥だ」との声も…。「インバウン丼」が食べない人にも批判された“深いワケ”
デフレが終わり、あらゆる物が高くなっていく東京。企業は訪日客に目を向け、金のない日本人は“静かに排除”されつつある。この狂った街を、我々はどう生き抜けばいいのか? 新著『ニセコ化するニッポン』が話題を集める、“今一番、東京に詳しい”気鋭の都市ジャーナリストによる短期集中連載。 【画像10枚】海鮮丼「極」で7800円、竹でも3900円…物議醸した「インバウン丼」 さまざまな商業施設や観光地が誕生した2024年。中でも話題になった施設の一つが、豊洲に誕生した「千客万来」だろう。豊洲市場に隣接した場所に誕生し、飲食店に温泉・ホテルが付いた複合型商業施設である。
ここが話題を呼ぶきっかけになったのが、「インバウン丼」という言葉。同施設で売られている高額な海鮮丼のことで、「インバウンド観光客向けのぼったくり商品」というイメージから、その名称が批判的に広がった。 興味深いのは、そこでの批判を見ていると、それは単なる「ぼったくり」に対する批判だけにとどまっていないことだ。もっと別の理由の恐怖がそこにある。それが「都市のテーマパーク化への恐怖」だ。どういうことか。
■千客万来の「インバウン丼」とはどのようなものか 「豊洲 千客万来」は大手・温泉施設グループとして知られる「万葉倶楽部」が施設管理者で、飲食街である「豊洲場外 江戸前市場」と、温泉施設「東京豊洲 万葉倶楽部」から成り立っている。 【画像10枚】海鮮丼「極」で7800円、竹でも3900円…物議醸した「インバウン丼」はこんな感じ もともとこの施設は、2020年の東京オリンピック・パラリンピックを目指して2018年度に開業予定だったが、指定管理者の変更や豊洲市場移転の延期、コロナ禍などを経て、計画よりも5年ほど遅れた開業となった。
■「日本の文化を発信」するスポットに ただ、事業者の提案には「食を起点に日本の文化を発信」するという理念が書かれてあり、訪問客の重要ターゲットとして訪日観光客が押し出されているのは変わりない。 実際、施設は江戸時代の街並みが再現されていて、長屋が連なっている。その中に飲食店が軒を連ね、場内で食べ歩きができるのだ。飲食店の横には大きな「時の鐘」もあり、さながら江戸時代をテーマにしたテーマパークである。