世界一の靴下屋を目指す「Tabio」、社名は「奥田民生さんに履いてほしい」から!? 人事部すらない、カリスマ経営者の会社を作り替えた2代目の思い
◆「カリスマ創業者」の動画を配信する理由
――先代が2年前に他界され、いよいよ責任も重くなったかと思います。 精神的な支柱を失ったことは、当社にとって大きいことでした。 急なことで、しかも先代が承継に関して何も準備をしていなかったから、当初は慌てました。 しかし、やっていることを変えはしません。 私が経営者でいる間は、靴下一本でやっていこうと思っています。 ただ、ひとつ、新しいことを始めました。 先代の生前の姿を映した動画を短くまとめて、社内に配信しました。 タビオで働く人には創業者・越智直正の存在を忘れてほしくないし、その姿から、タビオが何を大切にしてきたか振り返ってほしいと思っています。 ――社長就任から16年が過ぎました。次の承継についても考える時期ではないでしょうか。 今のところ、後継者を誰にするか具体的なことは考えていません。 越智家の人間でなければならないとも考えておらず、ふさわしい人がいればお願いしたいと思っています。 ちなみに私の子どもたちは、絶対に嫌だと言っています。 父親が苦労しているのを見過ぎたのかもしれません。 今、60歳まではトップとしての責任を果たすのが自分の役目だと考えています。 すなわち、上場企業の経営者を20年以上、務めることになります。 少しは人生で何かを成し遂げられた気持ちになれるのではないかという思いもあって、目標にしています。 あと5年ほどの間、やり残していることをやり遂げたいと思っています。 その一つが、この先、誰が経営を引き継ぐことになろうと、スムーズに会社運営ができる体制を整えることです。 越智家の人間であってもなくても、誰もが引き継げる環境です。 この先、誰が経営を担おうと、会社の歴史を無視したような経営はできないよう、歯止めをつくっておきたい。 創業精神から外れず、ダンとタビオが大切にしてきたものづくりや取引先との関係を重視した経営を引き継いでもらえるような、ルールや枠組みを確立しておきたいのです。