136日ぶりに無観客で再開したプロボクシング…約140万円の赤字もそこには多くのドラマが…意義ある一歩を踏み出す
新型コロナウイルスの影響で2月を最後にストップしていたプロボクシングの興行が12日、5か月ぶりに無観客で再開した。愛知県刈谷市のあいおいホールで行われた中日本新人王予選の5試合。万全の感染予防対策が取られた厳戒態勢の中で開催され、リングに立てる喜びをぶつけるように5試合中4試合がTKOで決着するというエキサイトな興行になった。約140万円の大会運営費用は、日本プロボクシング協会が援助したが、すべて持ち出しの赤字興行。それでも停滞していたボクシング界の一歩を示す意義ある興行になった。
広がる異様な光景
異様な光景だった。リングだけがポツンと中央に置かれ観客用の椅子は並べられていない。控室の代わりにパーテーションで区切ったコーナーが会場内に“密”を避け、剥きだしの状態で作られ、リングへの導線が示された。タイムキーパーら大会役員はフェイスガードに医療用の防護服、手袋で身を固めた。 レフェリーは1試合ごとにシャツを着替えるためクリーニングされた審判用のシャツが机に並べられている。換気をよくするため搬入用の大きな出入口は開けられたまま。要所に消毒液が設置され、報道陣を含め総勢90人となった関係者全員に検温を実施、報道陣は、体調チェックシートを提出し、リングサイドの記者席は、10メートル以上離され、カメラマンは2階席へ。選手、レフェリーには3週間前、前日の2度、抗体検査が実施され、選手は計量後、試合までホテルに隔離されている。 まず医療従事者への感謝を拍手で伝えるオベーションセレモニーが行われ、「2月27日以来、中止、延期が続きましたが、日本プロボクシングの火を消さないように136日ぶりに再び動き出します」との場内アナウンスの後、試合がスタートした。 記念すべき再開の第1試合、ミニマム級4回戦の松本幸士(30、HEIWA)対星野裕貴(29、中日)は、壮絶なダウンの応酬から始まった。現地でホテルに隔離されていた福地勇治レフェリーは、通常、両選手とチーフセコンドをリング中央で向き合わせて行う試合注意を止め、それぞれのコーナーに出向いて行った。