【子宮けいがんとワクチン】各国では男性も接種──イギリス在住研究者に聞く
子宮けいがんの原因となるヒトパピローマウイルス(HPV)に感染するのを防ぐワクチンについて、イギリス在住の江川長靖氏(ケンブリッジ大学病理学部)に聞くシリーズ第3回は、男性への接種などについてです。
■世界では男性への接種広がる
世界的に見た場合、HPV(ヒトパピローマウイルス)が引き起こす感染症に関連した健康負担は、9割が子宮けいがん関連になります。多くの、十分な検診システムの存在しない国では、子宮けいがんが発症し、死亡すること、一方、検診の充実した国では、検診で見つかってくる(子宮けい部の)上皮内がんや異形成やその治療が負担です。このウイルスの感染が原因の中咽頭がん(のどのがん)が増えてきているので、男性にとっても問題だよ、というのが2000年に入ってきてから、先進国を中心に言われ始めたことです。 このように、子宮けいがん関連の負担が圧倒的に大きいので、ワクチンで感染を防ぐ最初のターゲットにすべきは15歳までの女性であり、次のターゲットが15歳を超えた女性を対象にしたキャッチアップ接種(注:日本では今年度17歳から27歳になる女性は2025年3月末まで無料接種)の世代と男性になるとされています。 一方、性行為によって男性、女性関係なく、HPV(ヒトパピローマウイルス)に感染して、程度の差はあれ、男性、女性関係なく一定の病気の原因になっています。そのような感染症を防ぐ効果があるワクチンがあったとしたら、男女関係なく接種するのが自然ですよね。これはジェンダーニュートラル(性別に中立的な、性別で分けない)ワクチンという考え方になります。男性の方が費用対効果が低いとか女性に打った方が効果が高いなど、別々に考える必要はないということです。 両方にとって問題だから、男女両方が接種するのが普通と考えるわけです。したがって、女性に打てる状況が確保されて、準備が整った国は男女両方に打つようになっています。HPVワクチンを女性に接種している国があるとしたら、そのうち半分ぐらいの国では男性にも接種している状況です。