【子宮けいがんとワクチン】各国では男性も接種──イギリス在住研究者に聞く
■3歳で接種という議論も
まだ実現した国はないんですけども、このワクチンを幼児期に打つというのも、技術的には考えることができる段階に来ているんです。例えば、他のワクチンプログラムと一緒に保健所で打つとか、3歳児健診の時に打つとかそういうふうな形をとれば、ワクチンの接種率も自然と上がるよといった考え方が実際あります。 ただ、12歳を対象にした接種で接種率も高くて、うまくいっている国が、わざわざ3歳に変更するかと言われると、そこは変更する労力も考慮すると簡単ではありません。3歳で接種して、例えば25歳で子宮けいがん検診を受けるとして、その時点で、どうがんを防げたか、データをとって、効果を確かめるまで20年以上かかりますので、すぐに3歳で接種とはなりにくいかもしれません。しかし、『思春期に』接種することに特別な問題があって、それがハードルになっている国があるとすれば、考える価値があるかもしれません。
■イギリスではHPVワクチンは特別だと思われていない
イギリスでは、まずHPVワクチンは特別なワクチンではありません。他にもたくさんワクチンがある中の一つで、特別にリスクがあるわけでもなく、特別な人が打つようなものでもなくて、他のワクチンと同じように安全で効果があるから、学校の集団接種で打っています。学校の集団接種ができている国では接種率が高いんですよ。 イギリスでは、かつて、はしかのワクチンで自閉症が起こると医師が論文を発表して、ワクチンの接種率が下がり、はしかがまん延したことがあります。それでHPVワクチンを導入する時に、政府は、何か副反応が疑われることが起こった時の安全性評価のシステム、それをどう説明するかなどをあらかじめ準備していました。 アイルランドとかデンマークなどで、HPVワクチンの接種率が下がる事態が一時ありました。とはいえHPVの接種率が下がった、と世界でも一番有名なのは日本になります。実は南米のコロンビアでも日本で問題とされた後に、似たような事態になりました。しかし、公にはなかなか言わないけど、各国は日本で起こったことを学んでいて、どうすべきか考えていて、対応をしていきました。日本で起こったことを他山の石としたわけですね。 どんなに効果があって安全なワクチンでも、どんな理由であれ、信頼を失うと、打ってもらえない。人々がワクチンについて不安や疑問を抱くことは当然あり、その時にどう対応するべきかを、実際に接種する人たち、医療関係者、マスコミなどに、政府や国の保健機関が適切にわかりやすく説明していくことが大切です。そして、マスコミもその影響力を考えると正しく学ぶことも必要でしょう。そうした備えがあれば、今から出てくる新しいワクチンにも対応できますし。これがとにかく必要だと思っています。