【子宮けいがんとワクチン】各国では男性も接種──イギリス在住研究者に聞く
WHOによると142の国・地域がHPVワクチン接種を実施、そのうち女性のみに接種が68、男女ともに接種が74。中国とインドはWHO統計では未実施になっているが、地域によって導入済みです。 男性への接種については、日本はまだ議論が始まったところですよね。WHO=世界保健機関も、2019年時点では、ワクチンの量が足りないので、男性への接種はいったん待ってくださいという声明を出しました。それが2023年以降、ワクチンの供給に改善がみられました。今までワクチンを製造してきた2つの企業、メルクとGSKが増産したことに加えて、インド製と中国製ワクチンが市場に出始めたことです。 WHOによる昨年(2023年)のステートメント(宣言)では、準備が整った国から男性にも接種を拡大してくださいと変わりました。イギリスなどでも、費用対効果が男性の場合は良くないということで、導入が遅れました。その後、性行為とか性的な接触で感染し、男女双方の健康負担になっている、男女両方に関係する(ジェンダーニュートラル)と考え方が変わり、2019年に13歳以下の男性に対して接種を開始しました。日本で今、男性に接種すべきか、議論があるとすれば、今男性に接種を行っている国々と比較して、約10年遅れた議題をしていることになります。
■日本は原則3回接種 1回接種の国も
イギリスでは、45歳までの人は2回接種、25歳までに接種する場合は1回接種に去年移行しました。日本の制度では、原則として3回接種(最新の9価ワクチンでは1回目を15歳未満で打つ場合は2回接種)です。1回でも十分効果があるとして、1回接種に移行している国もあるし、なにより、1回も打たないよりも、1回でも打った方が圧倒的にいいということです。 最初にこのHPVワクチンの接種回数を設定した時には、どれぐらい抗体価(ウイルスへの感染を防ぐための免疫の量)が上がれば、どれぐらい効くかわからなかったわけです。わかっていたのは抗体価が高いほど確実に効くよねと。そして長期間、一定以上の抗体が保てないといけないということで3回接種で承認をとって、接種が始まりました。ワクチンの臨床試験の対象ではなかった15歳未満に実際、集団接種を始めてみると、2回接種でも高い抗体価が出るとわかった。ワクチンに対する免疫の反応が良いわけです。 そして、最近になって1回接種でも、HPVへの感染予防効果も異形成(がんの前段階の病変)を予防する効果も、3回接種に比べて、特に劣らないとわかりました。それで、今から導入する国では、1回接種でいきましょうとなった。1回接種の良いところは、例えば2回接種を想定した量のワクチンを準備した場合、1回接種でいいとなれば、2倍の人に打てることです。つまり、男性女性両方(もしくは2倍の女性)に打てることになる。ワクチン購入のコストも3分の1、2分の1になるのは、国にとっても非常にいいことでしょう。