「神が姿を変えているのか…」94歳“伝説の大道芸人”が人々を涙させた「あまりに神々しすぎる踊り」 病で体が動かない中、命を削って踊り続ける理由とは
■聖地・新宿の三井55広場で見せた踊り ギリヤークさんの魅力はどんなところだろうか。紀さんは、簡単な言葉にするとウソになりそうな気がしますが、と前置きしたうえで、「伝説」と呼ばれてメディアに多々取り上げられる存在になっても、つねに等身大で生きているところだと話す。 「身体の調子が悪くて悩んでいるときも、ご飯が美味しくてニコニコしているときも、飾らないまっすぐな方なんです」と笑顔で続けた。 弟の光春さんにも、ギリヤークさんのすごさを聞いた。安土桃山~江戸時代にかけて活動した女性芸人で、歌舞伎の創始者とされる出雲阿国の名を挙げ、光春さんは「彼も大道芸のひとつの形をつくってきた」とギリヤークさんを評する。
「ああいう踊りをすることが、彼の人生の目的だったんじゃないかな。前世は舞踊家だったかわからないけど、やっぱり同じような道を歩んできたのだろうな。そして今生もそういう生き方をしている。だから、自分の魂や心が知っているんだよね、どうすればいいかっていうのを」(光春さん) そして、ギリヤークさんの踊りから発せられる「魂のエネルギー」に、人々は引き付けられるのでは、と続ける。今はヨタヨタでどうしようもないけど、と笑いながら付け加えた。
その1週間後、新宿の三井55広場。ここは、ギリヤークさんがほぼ毎年公演を行ってきた「聖地」である。快晴の空の下、約300人の観客が集まった。 公演前、黒子の紀さんが登場し、前説でギリヤークさんはあまり体調が良くないことに言及。その後、ギリヤークさんが車いすで登場した。動きや表情はほぼない。 無事に公演はできるのだろうか……おそらくは筆者だけでなく、観客たちもそんな一抹の不安を抱きながら見守っていたが、演目の音楽が鳴るとギリヤークさんは覚醒。身体は思うように動かなくても、激しく強い気持ちが伝わってくる舞いを披露し、ついには車いすから立ち上がって大喝采を浴びた。