「神が姿を変えているのか…」94歳“伝説の大道芸人”が人々を涙させた「あまりに神々しすぎる踊り」 病で体が動かない中、命を削って踊り続ける理由とは
■「慣れ」も「新鮮さ」も両方ないとダメ そう話している間に、ギリヤークさんが目を覚ました。前月に故郷の函館と札幌で公演をしたばかりで、1週間後には新宿での公演も控えている。話を聞いてみた。 ――函館と札幌の公演はいかがでしたか? 面白かった。(自分が映ったニュース番組を)テレビで見て、ここでやったのか、って思ったんだよね。それくらい夢中でした。 ――たくさんのお客さんが来ていました。55年間も大道芸を続けてきたギリヤークさんは、お客さんの前に立つとどんな気持ちに?
やっぱりプレッシャーはかかります。どれだけ長くやってきても、緊張があるんですね。「今日は大丈夫かな?」「ウケるかな?」なんて。でも、それがあるから、いい仕事ができるんじゃないかなとも思います。大道芸人っていうのは、人にもよるんでしょうけど、僕の場合は「慣れ」も「新鮮さ」も大事で、両方ないとダメなのですね。 ――1週間後には新宿公演が控えています。 心配で心配で。何が心配かっていうと、(演目の)練習をできていないでしょう? トレーニング(リハビリ)は週に何回かしてるけどね。
――新宿公演を終えた後、ギリヤークさんがしたいことは何ですか? 映画(ギリヤークさんを追ったドキュメンタリー『魂の踊り』)を作ってね、やってるんだよね。この間ね、チャンバラ映画で、日本人が優勝したでしょう(真田広之が主演のドラマ『SHOGUN 将軍』。第76回エミー賞で作品賞・主演男優賞などを受賞)。そういう感じになりたいね。 この日、ギリヤークさんの黒子を2016年から務めている紀(きの)あささんも同席した。大道芸人・写真家として活動している紀さんは、公演のときだけでなく、身の回りの世話や活動のサポートもする、マネージャー的な存在である。
大道芸人の大先輩としてギリヤークさんを尊敬し、2013年に各地の公演に同行。撮影した写真集を出版するなど、長くて濃密な時間をともにしてきた。黒子をすることになったのは2016年からだという。 「2015年の夏にギリヤークさんの体調が悪くなって、2016年は一度も公演ができなかったんです。大道芸というより、もう立ち上がれないんじゃないかというほど悪化して。 でもギリヤークさんは、まだ踊りたいっていう気持ちを持っていらっしゃった。『車いすでどうですか、私は黒子の衣装で』と相談したら、ギリヤークさんが納得してくださって。そこから先は一緒に、車いすで公演をするようになりました」(紀さん)