なぜ川崎は主力が海外流出してもJ連覇を達成できたのか?
試練の夏を乗り越えた川崎は、元来の強さに泥臭さや執念深さ、そして我慢強さを融合させたチームに変貌を遂げ、気がつけばマリノスとの差を再び広げ始めていた。 「ずっと中心で出ていた選手たちがいなくなり、チームとしてもう一回奮起しないといけない状況でチャンスをもらった選手たちがどんどん成長して、チームを勝たせられる存在になっていくのを頼もしく思いながら見ていた。特に後半戦でそういう選手が次々に出てきてチームを勝たせて勢いに乗れたのは、大きな意味をもたらしたと思う」 得点ペースこそ落ちたものの、昨シーズンから今シーズンの前半までとはまったく異なる戦いぶりに谷口が手応えを口にすれば、身長168cm体重65kgの小さな身体でエネルギッシュに躍動する橘田も、戴冠の瞬間に立ち会えた自分へ笑顔を浮かべた。 「最初のころは出場時間がなかったけど、自分にできることをやってきた結果が守備の部分、ボールを受ける部分の成長につながっている。攻撃時でも常にカウンターへのリスク管理をしているし、そういう守備の予測の部分を評価してもらっていると思う」 ホームの等々力陸上競技場で引き続き行われたセレモニー。旗手は同期入団だった三笘の背番号「18」が記されたユニフォーム姿で人目をはばからずに号泣した。 同じく田中の「25」が記されたそれに袖を通していた、インサイドハーフの脇坂泰斗は「夏まで一緒に戦ってきた、仲間たちの思いも背負っていたので」と旗手の心中を慮る。さまざまな思いを爆発させる選手たちへ、鬼木監督も思わず目を細める。 「お疲れさまということと、もうひとつタイトルがあるよ、と」 残されたタイトルの天皇杯で川崎は決勝進出をかけて、12月12日の準決勝で大分と等々力陸上競技場で対戦する。浦和に勝って優勝できなかった試合展開を反省し、天皇杯連覇の先に過去に鹿島しか達成していない来シーズンのリーグ戦3連覇を見すえながら、苦境のなかで手にした新たな武器にさらに磨きをかけていく。 (文責・藤江直人/スポーツライター)