なぜ川崎は主力が海外流出してもJ連覇を達成できたのか?
中村氏と守田を欠いた陣容へのアプローチをこう振り返った47歳の指揮官は、さらに田中と三笘が旅立ってからのチーム作りを微妙に変えたと明かしている。 「最初はこれまで通りと考えていたけど、少し我慢する時期という意味で、多少はチームに勢いが足りなくなっても『ここを耐えればまた次へ向かって伸びていく』と、プレッシャーを与えすぎない形で進めた。それが選手たちに届いたかどうかはわからないけど、選手を信じれば必ずいい結果が生まれると信じて、この5年間やってきたので」 9月に入ると、チームをさらに大きく揺るがす事態に見舞われた。 YBCルヴァンカップ準々決勝で浦和に、ACLラウンド16では蔚山現代(韓国)に立て続けに敗れ、目標に掲げていた四冠制覇のうち2つを道半ばで失った。 しかも新型コロナウイルスの防疫対策で、ACL会場の韓国から帰国後の2週間は、ホテルとスタジアム以外は全面的に隔離される「バブル」のなかで活動。肉体面だけでなく精神面でもすり減るような状況で臨む、水曜日のナイトゲーム2つを含めた過密日程下の5連戦を全員で乗り越えようと、鬼木監督はあえて檄を飛ばした。 そして、指揮官の期待に応えたのが、アンカーで一気に頭角を現したルーキーの橘田健人(桐蔭横浜大卒)であり、インサイドハーフだけでなく左サイドバックでも「チームを勝たせる」と熱量をまき散らした東京五輪代表の旗手怜央であり、左ウイングに入った新外国人のマルシーニョやアカデミー出身の20歳のホープ、宮城天だった。 迎えた9月22日の鹿島戦、同26日の湘南ベルマーレ戦、同29日のヴィッセル神戸戦をすべて逆転劇で勝利。特に敵地で苦戦を強いられながら、後半アディショナルタイムに飛び出した宮城のJ1初ゴールで勝利した第32節は、谷口をはじめとするほとんどの選手が、今シーズンのターニングポイントとして位置づけるほど劇的だった。 続く湘南戦も旗手のゴールで追いつき、後半アディショナルタイムに昨シーズンは大分トリニータへ期限付き移籍していたFW知念慶が、足をつらせながらも頭で決勝ゴールをゲット。神戸戦では後半にダミアン、家長昭博らの主力がゴールで共演した。