J1神戸フィンク監督「優勝はおそらくない」”白旗”発言の是非
むしろ悲鳴をあげたいのは、YBCルヴァンカップのグループステージ2戦を含めた公式戦8試合を戦った8月の過密日程に、ヴィッセル戦までもが前倒しされて9試合となったフロンターレ側となる。ACL出場組はヴィッセルも含めて、ルヴァンカップは準々決勝からの出場になるからだ。 指揮官はさらに、高温多湿の真夏で組まれた過密日程が、ヴィッセルに及ぼしているネガティブな要素にも言及している。 「選手に関してもここ最近、本当にけが人が多い。主力選手たちが戻ってくればチームにとって大きなプラスになるので、それが待ち遠しい」 右足首を痛めてリーグ戦5試合を欠場していた、キャプテンのMFアンドレス・イニエスタはFC東京戦の後半14分から復帰。前半に先制しながら直前に逆転されていたチームをけん引し、ピンポイントの直接フリーキックから、DFダンクレーが決めた試合終了間際の同点弾をアシストした。 ただ、センターバックの大崎玲央は3試合、点取り屋のFWドウグラスは4試合続けて欠場中だ。イニエスタやベルギー代表DFトーマス・フェルマーレンらもベンチから外れた時期、例えば残り7分までフロンターレをリードしながら逆転負けを喫した前節は、交代枠を2つしか使っていない。 最下位の湘南ベルマーレと引き分けた、5日の第14節でも交代枠を3つ余らせている。新型コロナウイルス禍の特例で従来の3が5に増えた交代枠をフル活用し、真夏の過密日程を乗り切っているチームがほとんどを占めるなかで、フィンク監督はこんな言葉を残したことがある。 「相手を怖がらせる、クオリティーの高い選手がベンチにいない。(起用しなかった)若い選手たちにクオリティーがないと言っているわけではない。ただ、彼らには経験が足りないし、まだまだ学ぶことが多い。このような状況下で彼らには期待しているので、一刻も早くレベルを上げてほしい」
ヴィッセルはキーパーを含めた27人の選手で、今シーズンを始動させた。ACLを並行して戦うチームとしては異例とも言える少数精鋭体制を、フィンク監督は「満足している」と受け止めていた。 「あまり人数が多いと、選手たちは『自分がこのチームに必要だ』という思いがなくなるからだ」 その後に新型コロナウイルスによる長期中断を余儀なくされ、再開後の過密日程も見越せた。それでも8月28日に締め切られた夏の移籍期間で補強に動かなかったのは育てながら戦う、ヴィッセル側からも求められた方針を貫いたからであり、折り返しが近くなった段階で若手を「経験が足りない」と位置づけるのは、青写真通りにチームを導けなかったことを意味している。 ヴィッセルの三木谷浩史オーナーが掲げてきた、ACL制覇に今シーズンの比重を置いたとも考えられる。実際、ヴィッセルはグループステージで連勝発進し、グループGの首位に立つ。ただ、AFCは10日になって、集中開催の期間を11月15日からの約1カ月間に変更すると唐突に発表した。 当然ながらこの期間にもJ1リーグが組まれていて、前後にずらすとなると、予備日がほとんどない状況も相まって未曾有の大混乱に陥る。当事者クラブの指揮官として、フィンク監督も「ひと晩考えてみたが、どのようにとらえていいかがわからない」と偽らざる心境を明かしている。 FC東京戦後に言及した「若手の上達に集中していきたい」は、どのような形で迎えるのかが不透明なACLを見すえているとも考えられる。ただ、これまでも、そしてこれからも、応援するファン・サポーターはひいきのチームが勝つ瞬間を何よりも楽しみにしている。