神戸イニエスタが今サッカー少年達に伝えたいこと…「ワクワク感を忘れず…忍耐を持って難しい時間を乗り越えよう」
稀代の天才パサーから日本サッカー界の未来を背負っていく子どもたちへ、猛威を振るい続ける新型コロナウイルスを乗り越え、前へと進んでいくためのメッセージが送られた。 ヴィッセル神戸でプレーする元スペイン代表MFアンドレス・イニエスタ(35)が5日、動画投稿サイト『YouTube』内のクラブ公式チャンネルで生配信された、オンライントークショーに登場した。 パソコンの画面を介してイニエスタが質疑応答を交わしたのは、ヴィッ セル神戸少年少女スクールおよび自身が日本で監修しているアカデミー『イニエスタ・メソドロジー』に所属する約100人の小学生たち。ゴールデンウィーク中にヴィッセルが展開する「一致団結StayHome」のなかで、こどもの日に合わせて企画されたプレミアムイベントへ自宅からユニフォーム姿で臨んだ。 子どもたちから寄せられた質問のなかには、緊急事態宣言発令が今月末まで延長されたなかで不要不急の外出を自粛。自宅で過ごさざるを得ない現状が続く心境が、色濃く反映されたものもあった。 「休校でサッカーのためのルーティーンを考えています。イニエスタ選手は何をしていますか」 3月下旬から活動停止となり、自宅待機を余儀なくされて久しいヴィッセルの選手たちのなかで、FCバルセロナで一時代を築いたスーパースターの心得を学びたかったのだろう。神戸市内の自宅で夫人のアンナさん、そして4人の子どもたちと過ごす日々の一部をイニエスタはこう明かした。 「練習ができずに難しい時間が続くなかで、コンディショニングを落とさないために家でできることをやっています。例えば体幹を鍛えたり、ちょっとしたコーディネーションをしたり、バイクを使った練習をしていますし、チーム全体でオンラインによるエクササイズもしています。幸いにも僕が住んでいるところの周りには、エクササイズができるような場所もあるので」
3393万人のフォロワー数を誇るイニエスタのインスタグラム(andresiniesta8)には、アンナさんと仲睦まじくトレーニングに励む動画が何本もアップされている。休校中でもできることはいくつもあると伝えたイニエスタは、元日の天皇杯決勝を制してクラブの悲願だった初タイトルを獲得し、笑顔でカップを新国立競技場の空へ掲げる姿が収められたパネルをバックにしながら言葉を紡いだ。 「あとはモチベーションであるとか、練習に戻るワクワク感を失わないように心がけています」 ここで言及したワクワク感、つまり大好きなサッカーを心から楽しむマインドこそが、イニエスタが伝えたかったキーワードなのだろう。昨シーズン終盤から右肩上がりの軌跡に転じ、8勝1分けと無敗をキープ。その間に天皇杯とFUJI XEROX SUPER CUP2020を制し、初体験のACLでも連勝発進した直後に突入した中断期間が明ける瞬間を、誰よりもイニエスタが待ち焦がれている。 「ヴィッセル神戸というチームでプレーできていることを喜ばしく思っているし、2つのタイトルを獲得できたことも自分のなかでは非常に大きなことです。これからもこのチームでたくさんのことを成し遂げていきたいし、この日本での生活が長く続くことを願っています」 2月下旬から公式戦が中断されてきたなかで、母国スペインの最古のスポーツ紙『ムンド・ディポルティーボ』が、同国のラジオ局が電話で行ったイニエスタのインタビューを転載。2021シーズンまで結んでいるヴィッセルとの契約をまっとうしたい、とするイニエスタの意思を報じた。 下部組織を含めて22年間も在籍したバルセロナに次ぐ生涯で2つ目の所属クラブへ、スペイン代表での時間を含めて積み重ねてきた、濃密な経験を生かしながら強豪へと変貌させる。ヴィッセルに託されたプロジェクトに魅せられている心境を、子どもたちを前にして明言したイニエスタは質疑応答の最後、数えて11個目となる質問を聞いた直後に思わず苦笑いを浮かべている。 「生まれ変わってもサッカー選手になりますか? そうならばどのポジションでプレーしますか?」 苦笑いは虚を突かれた反動なのだろう。もっとも、ピッチ上で見せるパフォーマンスと同じく、すぐに思考回路を整理したイニエスタは自らの人生に照らし合わせて、正確無比な“パス”を返した。